姫と騎士のめぐりあい

残念ながらそれは誤解だった。
というより、
イレーヌは知らなかったのだ。
ハーゲンは大金を稼ぐ男だったが
抱える負債も大きかった。

ハーゲンが死んだことを知るやいなや
貸し主たちはすぐさま負債を回収しに来た。
あれよあれよと言う間に資産が溶けていき、
全て精算された頃には
ほとんど何も残っていなかった。

こうしてイレーヌとヴァルタザールは
ハイドランジアの片隅で
爪に火を灯すように生きていた。
過去の栄華を覚えているイレーヌにとって、
生き別れた異母姉の輝かしい姿は
どれほど羨ましく映っただろうか。

ヴァルタザールにとってもそれは同様で、
歳もそんなに違わないはずの
従兄弟たち(エリザベートとマティアス)が
自分とこうも違う人生を歩んでいるとは。
光の中を歩く彼らと、
闇の中に紛れている自分。
「なぜ自分たちは捨てられ、彼女たちは祝福されて生きるのか。」
その問いが、彼の魂を焼き続けていた。

やがてイレーヌも失意のうちに亡くなり、
ヴァルタザールは1人になった。
毎日を生き延びるのに精一杯で
正直母の復讐を果たそうなどと考える余裕はなかった。
自分が這い上がるためには、
学問を極めるしかない。
必死の思いで勉強して、
奨学金を勝ち取ったヴァルタザールは
大学に入学した。