姫と騎士のめぐりあい

夜の帳が降りるハイドランジア西方。
霧深い山の谷に、
古びた修道院がぽつりと佇んでいた。

そこはかつて祈りの場であったが、
今は亡命貴族たちの隠れ家となっている。
旧ユーフォルビア王国の王党派の残党が潜み、
密かに武器を集めていた。

その最奥の一室で、
ヴァルタザールは蝋燭の炎を見つめていた。
傍らには、まだ目を覚まさぬエリザベート。
淡い光が彼女の白い頬を照らす。
「母上……これで、あなたの願いは果たされます。けれど――なぜだろう。胸が痛い。」

手を伸ばし、そっと彼女の髪に触れかけて、
ヴァルタザールは拳を握りしめる。
「愛された者は、どうしてこうも眩しいのだろうな……俺には決して届かない光だ。」
彼の心には、
長い間積もり続けた黒い嫉妬が渦巻いていた。
母は王族の出だが、革命によって身分を失った。
貧しい生活の中で母を看取った少年時代。

毎日を生きるのに必死だったあの頃、
たまたま街で華やかなパレードを見かけた。
ハイドランジアの友好国である
マグノリア王国の国王一家が
親善のためにやって来て
歓迎式典が開かれていたのだ。
4頭立ての豪華な馬車に乗った
マグノリア王国の国王一家は
豪華な衣装に身を包み、
歓声を挙げるハイドランジア国民に
笑顔で手を振っていた。

仲良く寄り添う国王夫妻に
少し身を乗り出して笑顔を振りまく幼い姉弟。
幸せを絵に描いた様な光景だ。