その時、
どこからともなく号令が響く。
「王女殿下から離れろ!我々がなんとしても守り抜く!」
マグノリア王国の精鋭部隊
──エーリヒの率いる兵たちが駆けつけたのだ。

襲撃犯たちは捕らえられ、
次々と庭園に倒れる。
精鋭部隊は当然のごとく
ヴァルタザールも捕らえようとする。
しかし、それを遮ったのは
エリザベート本人だった。
エリザベートはヴァルタザールを見つめ、
強い口調で叫ぶ。
「違う!この人は彼らと何も関係ないの!」
ヴァルタザールの冷静な目が、
月明かりに光る。

「そんなことは……!」
思わずエーリヒが手を伸ばす。
「エリザベート様、危険です!この男を捕らえなければ──」

「やめて!彼が襲撃犯の仲間ならどうして何度も私を助けてくれるのよ!」
エリザベートはエーリヒの手を力任せに振り払う。
なんとかエリザベートを説得しようと
試みるエーリヒたちだったが、
確たる証拠もまだなく、
エリザベートの勢いに押されてしまう。

恋は盲目と言うのか、
一度昂ってしまった感情に押され、
エリザベートはエーリヒたちを追い返してしまった。