別邸の庭園は、
月明かりに照らされ、
白い薔薇が静かに揺れていた。
エリザベートは書斎で資料をまとめた後、
夜風に誘われるように庭を歩いていた。

「……少し、外の空気を吸おうかな。」
淡く呟き、ショールを肩にかける。
エリザベートの足音に気づいたのか、
ヴァルタザールも姿を見せた。
「リズ、こんな夜遅くまで……」
「あなたは……?」
「俺は、ただ付き添わせてもらっているだけです。」

彼の微笑みと落ち着いた声に、
エリザベートの心は安らぐ。
(あの襲撃の時も……側にいて守ってくれた……)

すると突然、
茂みの影から刃を持った人物たちが飛び出した。
彼らは王党派の末端構成員
──ヴァルタザールの指示を受ける前の下働きたちだ。

「きゃっ!」
突然現れた彼らを見て、
エリザベートは思わず後ずさるが、
ヴァルタザールが瞬時に前に出る。

「リズ、大丈夫だ!」
その一声と共に、
襲撃者の刃を受け止め、跳ね返すヴァルタザール。
庭園の中を駆けながら、
何度も襲撃者を阻止する彼に、
エリザベートは心を打たれた。
(彼は何度も……私を守ってくれる……私、彼に……)
淡い恋心が胸の奥で芽生えているのを感じた。