ユリウスの瞳が鋭く光る。
「ヴァルタザール……?」
「はい。彼は、ジゼル王妃の異母妹──シャルロット様の遺児。失意のうちに亡くなった母の怨念を継ぎ、エリザベート様の命を狙っております。」
「……なんと……」
重苦しい沈黙が落ちる。
ユリウスは拳を握りしめ、
長い間、机上の地図を見つめていた。
「エーリヒ・フォン・ロートシルトが、すでに動いております。彼は深夜未明にハイドランジアへと出航しました。」
「そうか……彼が……」
ユリウスの表情がわずかに緩む。
「あの青年なら信頼できる。王女が最も信頼をおく男だ。」
そして、すぐさまユリウスは立ち上がる。
「参謀を呼べ。精鋭を選抜しろ。エリザベートを、必ずこの国に連れ戻すのだ。」
侍従が慌ただしく走り去る。
選抜部隊は直ちに集められ、
ハイドランジアにいるエーリヒと合流すべく、
すぐさま出発した。
彼らの背中を見送ったフレデリカは、
ひとまず安堵の息をつく。
(エリザベート様……どうか、無事でいて……)



