姫と騎士のめぐりあい

フレデリカはエーリヒの乗った船の出航を見届けると、
踵を返して王都グラディオーレンへ向かう
列車に乗り込む。
一流のビジネスウーマンでもある彼女は
『時は金なり』であることを
よくよく理解していた。
一刻も早く、国王に告げなければならない。



夜が明けて、
爽やかな朝日が差し込む王の執務室に、
緊迫した空気が流れていた。
分厚い絨毯の上を、金の飾緒が揺れる。

重厚な扉がノックされ、
侍従が一人の女性を通す。
もちろんその女性とは、
フレデリカ・フォン・ヘルヴェーク伯爵令嬢である。
航路を制する伯爵家の令嬢にして、
いまや国際銀行ロートシルト家と
対等に渡り合う取引相手でもある。

「久しいな、ヘルヴェーク令嬢。」
机の奥に座るのは、
マグノリア王国国王ユリウス本人。
温和な笑みを浮かべながらも、
その目には王としての厳しさが宿っていた。

フレデリカは膝をつき、深く頭を垂れた。
「陛下。僭越ながら、王女殿下──エリザベート殿下に関わる重大な報せをお伝えに参りました」
ユリウスの眉がわずかに動く。
「……ハイドランジアからの報告は受けている。襲撃事件だな。」
「はい。しかし、陛下。あれは単なる暴徒の犯行ではございません」
「なんだと?」

フレデリカは顔を上げ、静かに言葉を続ける。
「我が家の傘下にある商人から寄せられた確かな証言がございます。今回の事件の背後には、旧ユーフォルビア王国の王党派の末裔たち、そしてハイドランジア帝国の宮廷内部に巣食う反女帝派が関わっております。彼らは“ヴァルタザール”という青年を中心に結束し、王政復古を目論んでいるのです。」