翌朝、湖畔の小道を散歩する二人。

「おはよう、リズ。」
ヴァルタザールは手に花籠を持って現れる。
「庭の薔薇が咲き始めていたので、摘んでみたんだ。」
「まあ……綺麗ね。ありがとう。」

並んで歩きながら、互いの故郷や夢を語り合う。

「私は、国のために役に立ちたいの。外交を通じて、争いのない世界を作るのが夢なの。」
「素晴らしい夢だ。君ならきっと叶えられる。」
その微笑の裏で、
ヴァルタザールの心は複雑に揺れていた。
(母の苦しみを思うと、心がざわつく……ジゼル王妃は、何不自由なく愛され、家族に守られ、幸せに暮らしている……その幸福を、母と俺が味わった不幸と同じものに変えてやる……)