ハイドランジア帝国の首都・ルーベンス宮。
冬の名残を感じさせる夜風が、
城の尖塔をかすめていく。
今宵、
宮殿ではヴィルヘルミーナ女帝主催の
外交晩餐会が開かれていた。
大理石の床には煌びやかなドレスの裾が流れ、
金糸で刺繍された軍服や礼装が並ぶ。
音楽隊の弦が優雅に鳴り響き、
シャンデリアの光が
グラスの中の赤ワインを照らした。
エリザベートは淡いラベンダー色のドレスを纏い、
金の髪を夜会巻きにしていた。
留学してはや二年──
その姿はすっかり、
成熟した王女のものになっている。
「リズ、よく似合ってるよ。」
ヴァルタザールが声をかける。
お茶会ですっかり女帝に気に入られたヴァルタザールも
今宵のゲストの1人だ。
先日のお茶会で女帝から正式に招待された。
彼は黒の燕尾服を着こなし、
端正な顔立ちに穏やかな笑みを浮かべている。
「ありがとう。これでも少し緊張しているのよ。」
「大丈夫。君は女帝陛下の客人であり、皆が敬意を抱いている。何も恐れることはないさ。」
そう言って、彼はそっと手を差し出した。
エリザベートがその手を取ると、
二人はゆっくりとホールの中央へ歩き出す。
舞踏曲のリズムに合わせて踊りながら、
彼女は一瞬、胸の奥に疼く痛みに気づいた。
(こんなふうに手を取られるのは、あの時以来……)
脳裏に浮かぶのは、黒髪の青年
――エーリヒの横顔。
冬の名残を感じさせる夜風が、
城の尖塔をかすめていく。
今宵、
宮殿ではヴィルヘルミーナ女帝主催の
外交晩餐会が開かれていた。
大理石の床には煌びやかなドレスの裾が流れ、
金糸で刺繍された軍服や礼装が並ぶ。
音楽隊の弦が優雅に鳴り響き、
シャンデリアの光が
グラスの中の赤ワインを照らした。
エリザベートは淡いラベンダー色のドレスを纏い、
金の髪を夜会巻きにしていた。
留学してはや二年──
その姿はすっかり、
成熟した王女のものになっている。
「リズ、よく似合ってるよ。」
ヴァルタザールが声をかける。
お茶会ですっかり女帝に気に入られたヴァルタザールも
今宵のゲストの1人だ。
先日のお茶会で女帝から正式に招待された。
彼は黒の燕尾服を着こなし、
端正な顔立ちに穏やかな笑みを浮かべている。
「ありがとう。これでも少し緊張しているのよ。」
「大丈夫。君は女帝陛下の客人であり、皆が敬意を抱いている。何も恐れることはないさ。」
そう言って、彼はそっと手を差し出した。
エリザベートがその手を取ると、
二人はゆっくりとホールの中央へ歩き出す。
舞踏曲のリズムに合わせて踊りながら、
彼女は一瞬、胸の奥に疼く痛みに気づいた。
(こんなふうに手を取られるのは、あの時以来……)
脳裏に浮かぶのは、黒髪の青年
――エーリヒの横顔。



