姫と騎士のめぐりあい

夜。
月明かりの下、
ヴァルタザールは下町の古びた倉庫にいた。
「……計画は順調だ。」
フードを被った男たちが無言で頷く。
ヴァルタザールは懐から一枚の紙片を取り出した。
そこには、
エリザベートとヴィルヘルミーナが並んで笑う肖像。

「女帝も、王女も……どちらも滅びの駒になる」
低い声でそう呟くと、
指先で写真を裂き、火にくべた。

炎がゆらめく。
灰となって舞い上がる中、
彼の唇に浮かんだのは冷たい微笑。

「復讐の夜明けは近い――母上」


翌朝。
エリザベートは窓辺で日記を開く。
『ハイドランジアの春は美しい。
けれど、ときどき胸の奥に冷たい風が吹く。
あの日、私を救った彼の笑顔が、なぜか遠く感じるのはなぜだろう――』


遠い地で、エーリヒもまた同じ夜風を受けていた。
彼の手には、一通の電報。

“エリザベート王女、再び狙われる恐れあり。
詳細、ハイドランジアにて―― フレデリカ”

その電報をぐしゃっと握りしめ、
エーリヒはゆっくりと立ち上がった。

「……間に合ってくれ、どうか。」
彼の旅が、
運命の交差点へと向かい始めた。