姫と騎士のめぐりあい

お茶会のあと、
エリザベートは庭園の回廊をゆっくり歩いていた。
花々の香りが漂う中、
隣を歩くヴァルタザールが口を開く。

「女帝陛下は、君を高く評価しているようだね。」
「恐れ多いわ。……でも、少し緊張した。」
「君は自然体でいい。ありのままの君を好む人もいる。」
「……あなたも?」
その問いに、ヴァルタザールは軽く笑った。
「もちろん」

沈黙が流れる。
彼の横顔を見つめるうちに、胸の鼓動が速くなる。
なぜか懐かしい。
けれど、あの優しい青い瞳ではなく――
焦げるような灰色の眼差しが、
今は彼女の世界を支配していた。

(エーリヒ……あなたなら、どうしていたかしら)
一瞬浮かんだその名を、すぐに振り払う。

ヴァルタザールは足を止め、低く囁いた。
「リズ、気をつけて。今回の襲撃……終わっていないと思う。」
「……え?」
「俺の友人が、奇妙な噂を耳にした。
 “王女を狙う者たちは、まだ動いている”」
エリザベートの瞳が大きく見開かれる。

「どうして……? 誰が私を?」
「わからない。でも、君の存在を快く思わない勢力がいるんだろう。」
「……」
エリザベートの手が小刻みに震える。
ヴァルタザールはそっとその手を包んだ。

「怖い時は、俺を頼ってほしい。」
「……ええ」

(この人がいれば、大丈夫)
そう思った瞬間、
エリザベートの心はまた少し彼に傾いた。