姫と騎士のめぐりあい

エリザベートが襲撃された日から
しばらくして。
ハイドランジア宮殿の庭園には、
香り高い白薔薇が咲き誇っていた。
噴水の水音と鳥のさえずりだけが響く中、
エリザベートは控えめに頭を下げる。

「陛下、お招きいただきありがとうございます。」
「いいのよ、エリザベート。あなたの回復を祝いながら、少しお話がしたかったの」

ヴィルヘルミーナ女帝――
若くして帝国をまとめ上げた名君。
鋭い金の瞳に、底知れぬ聡明さが宿る。

テーブルには三人。
エリザベートの隣には、
当然のようにヴァルタザールが座っていた。
彼は深緑の正装に身を包み、
穏やかな笑みを浮かべて女帝に一礼する。

「リズを助けてくれたと聞いたわ。」
「光栄です、陛下。あのような時、私でなくとも動いたでしょう。」
「謙虚ね。でもあなたがいなければ、彼女は今ここにいなかった。」
女帝は意味ありげに微笑む。
エリザベートの頬がわずかに染まった。
「本当に……あの時、彼がいなかったらと思うと、怖いくらいです。」
「ふふ。あなたの国では“恩人に花を贈る”習慣があると聞いたけれど?」
「えっ……あ、はい。でも、そんな大げさな……」
「私は見たいの。王女の微笑みが、どう咲くのかを。」

女帝の言葉に、
エリザベートは戸惑いながらも笑った。
ヴァルタザールはその様子を静かに見つめている。
その瞳の奥に潜むのは、
優しさに似た執着である。