「この件を知る者はごくわずか。私は取引上の情報経路から掴んだけれど、王宮にはまだ正式な報告が届いていないはずよ。」
「なぜ、それを俺に?」
「あなたが――王女様のためなら命を懸ける人だから。」
沈黙。
エーリヒは何も言わない。
だがその目に宿る光は、
すでに決意の色を帯びていた。
「……フレデリカ。君の持つ航路網を使わせてくれ。」
「言うと思ったわ。」
彼女は薄く笑い、一枚の地図を差し出す。
「三日後、我が家の大型船《グレイ・マーメイド号》がハイドランジアに向かう。名目は交易だけど、貨物のひとつに“あなたの荷”を積む余地がある。」
「……恩に着る。」
「恩なんていらないわ。」
彼女は真っ直ぐに彼を見つめる。
「ただ、必ず戻ってきて。ロートシルトの後継者を失うのは、私にとっても損失だから。」
「ふっ……相変わらず現実的だな。」
二人は小さく笑った。
しかし、その笑みの奥に滲むのは、
互いに言葉にできない不安と敬意だった。
フレデリカが去った後、
エーリヒは書類の束を静かに机に置いた。
窓の外には、冷たい冬の光。
(エリザベート……)
彼の胸の奥で、
長いあいだ封じていた想いが再び息を吹き返す。
“今度こそ、あなたを守る。
たとえこの手が、再び血に染まるとしても――”
「なぜ、それを俺に?」
「あなたが――王女様のためなら命を懸ける人だから。」
沈黙。
エーリヒは何も言わない。
だがその目に宿る光は、
すでに決意の色を帯びていた。
「……フレデリカ。君の持つ航路網を使わせてくれ。」
「言うと思ったわ。」
彼女は薄く笑い、一枚の地図を差し出す。
「三日後、我が家の大型船《グレイ・マーメイド号》がハイドランジアに向かう。名目は交易だけど、貨物のひとつに“あなたの荷”を積む余地がある。」
「……恩に着る。」
「恩なんていらないわ。」
彼女は真っ直ぐに彼を見つめる。
「ただ、必ず戻ってきて。ロートシルトの後継者を失うのは、私にとっても損失だから。」
「ふっ……相変わらず現実的だな。」
二人は小さく笑った。
しかし、その笑みの奥に滲むのは、
互いに言葉にできない不安と敬意だった。
フレデリカが去った後、
エーリヒは書類の束を静かに机に置いた。
窓の外には、冷たい冬の光。
(エリザベート……)
彼の胸の奥で、
長いあいだ封じていた想いが再び息を吹き返す。
“今度こそ、あなたを守る。
たとえこの手が、再び血に染まるとしても――”



