ある午後、
学園の特別講義にヴィルヘルミーナ女帝が姿を見せた。
彼女はここの名誉総裁でもあり、
年に数回訪れるのだ。
白金の髪を結い上げ、
深紅のマントをまとうその姿は、
威厳と知性の象徴のようだった。
「王女エリザベート。あなたの論文、拝読しましたよ。『国家における道徳の根幹』――見事なものだったわ。」
「光栄に存じます、陛下」
「あなたは心を尽くして学んでいる。それが文から伝わるのです。……ですが、心の奥に悲しみを隠しているようにも見えますね。」
ヴィルヘルミーナは、
まっすぐな眼差しで言った。
エリザベートは一瞬、息をのんだ。
「……私には、乗り越えなければならないものがあります。」
「それならば学びなさい。知は、時に人を救います。」
その言葉は、静かに彼女の胸に沁みた。
数日後、講義の帰り道。
学園の庭園で本を抱えた青年が、
彼女に声をかけた。
「それは『ハイドランジア史綱』ですね。重いでしょう、僕が持ちます。」
振り向くと、そこに立っていたのは
灰金の髪に青い瞳の青年――ヴァルタザール。
整った顔立ちに柔らかな笑み。
どこか、エーリヒを思わせる雰囲気をまとっていた。
「ありがとう……でも、自分で持てるわ。」
「そう言わずに。僕は同じクラスのヴァルタザール・ハーゲン。あなたの論文発表、感銘を受けました。」
「まあ……そうなの?それはどうも。」
彼の丁寧な物腰に、
エリザベートは少し頬を染めた。
それ以来、
彼は何かと彼女のそばに現れるようになった。
学園の特別講義にヴィルヘルミーナ女帝が姿を見せた。
彼女はここの名誉総裁でもあり、
年に数回訪れるのだ。
白金の髪を結い上げ、
深紅のマントをまとうその姿は、
威厳と知性の象徴のようだった。
「王女エリザベート。あなたの論文、拝読しましたよ。『国家における道徳の根幹』――見事なものだったわ。」
「光栄に存じます、陛下」
「あなたは心を尽くして学んでいる。それが文から伝わるのです。……ですが、心の奥に悲しみを隠しているようにも見えますね。」
ヴィルヘルミーナは、
まっすぐな眼差しで言った。
エリザベートは一瞬、息をのんだ。
「……私には、乗り越えなければならないものがあります。」
「それならば学びなさい。知は、時に人を救います。」
その言葉は、静かに彼女の胸に沁みた。
数日後、講義の帰り道。
学園の庭園で本を抱えた青年が、
彼女に声をかけた。
「それは『ハイドランジア史綱』ですね。重いでしょう、僕が持ちます。」
振り向くと、そこに立っていたのは
灰金の髪に青い瞳の青年――ヴァルタザール。
整った顔立ちに柔らかな笑み。
どこか、エーリヒを思わせる雰囲気をまとっていた。
「ありがとう……でも、自分で持てるわ。」
「そう言わずに。僕は同じクラスのヴァルタザール・ハーゲン。あなたの論文発表、感銘を受けました。」
「まあ……そうなの?それはどうも。」
彼の丁寧な物腰に、
エリザベートは少し頬を染めた。
それ以来、
彼は何かと彼女のそばに現れるようになった。



