エーリヒはその姿を目に焼き付けるように見つめていた。
やがて、遠くから家族と侍女たちの声が近づく。
もう、二人だけの時間は終わりだった。
「……行きましょう。」
エリザベートは背を向けた。
そのマントが翻り、朝の光を受けて淡く揺れる。
(さようなら、私の騎士。どうか、あなたの道にも光がありますように――)
エリザベートは見送りに来た国王夫妻や弟妹たちと
別れを惜しんだ。
「寂しくなったらいつでも電話してね。女帝陛下にもどうぞよろしく。」
母のジゼル王妃はすでに目が真っ赤だ。
ユリウス国王はそんな妻の肩を抱き、
もう片方の腕でジゼルを抱きしめる。
家族や侍女たちに見守られ、
エリザベートの乗り込んだ馬車は、
ゆっくりと城門を出ていった。
エーリヒは動かず、その背中を最後まで見送った。
冷たい風が吹き抜ける。
まるで、彼女の香りだけが残っていくように。



