姫と騎士のめぐりあい

エリザベートとエーリヒの間に
距離ができて数カ月後。
訓練場の片隅でいつものように剣を振るっていると、
騎士たちの噂話が耳に入ってきた。

「聞いたか?エリザベート様、外国に留学されるらしい。」
「おお、聞いた聞いた。留学とは立派な決断だな。」
「留学するということは結婚は諦められたのか。」
「案外、留学先で新しい出会いがあるかもしれないぞ。」
その噂話を耳にした瞬間、
エーリヒの手から木剣が落ちた。
乾いた音が、砂の上に響く。
(……留学? なぜ、そんな話を俺は何も知らない。)

翌朝、
彼の足は自然と王女の執務室へ向かっていた。
「殿下、エーリヒ殿がお見えです。」
侍女の声に、エリザベートはわずかに肩を強張らせる。
彼を避けていた日々――けれど、逃げ続けることはできなかった。
「……通して。」

扉が閉まり、二人きりになる。
沈黙が、部屋の空気を凍らせた。
「……留学なさると、聞きました。」
エーリヒの声は低く、押し殺したようだった。
エリザベートは手元の書類を整えながら、
努めて穏やかに答える。
「ええ。正式な発表はまだだけれど……国王陛下の許可も頂いたわ。」