姫と騎士のめぐりあい

そんなある日、
ヘルヴェーク伯爵家から縁談の申し込みが舞い込む。
資産家であるロートシルト伯爵家には
各方面から様々な形で縁談が寄せられるが、
ヘルヴェーク伯爵家はなんとも断りづらい相手だ。
彼らは造船会社を経営し、
大型商船団を複数所有しているため、
マグノリア王国の物流を支配している
といっても過言ではない。
ロートシルト伯爵家的にも
ビジネス上の重要なパートナーだ。

ヘルヴェーク伯爵令嬢フレデリカと結婚すれば、
ロートシルトグループは
さらにビジネスを拡大することができる。
それがわかっているから
ヘルヴェーク伯爵も随分と強気だ。
一方の父、ロートシルト伯爵は
エーリヒの意志を尊重すると言ってくれている。

自分の将来を考えると
悪くない縁組だと頭ではわかっているのに、
応じるべきではないと思う自分がいる。
なぜだか、
この縁談に無関係のはずの
エリザベートの顔がチラつくのだ。
(なんでリサの顔が浮かぶんだ。一時の感情に流されるな。冷静に判断しろ。)

しばし熟考したものの、
やはり結婚への意思が固められず、
エーリヒは丁重に断ることにした。
しかし、
ヘルヴェーク伯爵家の方が一枚上手だった。

エーリヒが断るのをあらかじめ見越していたのか、
それは定かではない。
しかし、
まるで外堀を埋めるかのごとく、
さも婚約が既成事実であるかのように
社交界で噂を流したのだ。
世界有数の金融ネットワークを持つロートシルト家と
王国の物流の要であるヘルヴェーク伯爵家。
両家の縁組はあまりに理に適っていたので
ただの噂話が現実味を帯びて
まことしやかに社交界を駆け巡った。