『今宵は友好国の王侯貴族がお見えなのですから、良いお相手を探すのに絶好の機会では?』
そう自分が発言した時のリサの傷ついた顔を見て、
咄嗟に「しまった。」と思った。
さすがに言い過ぎてしまった。
リサは引き攣った顔をして1人にしてくれと言う。

咄嗟に何か言おうと思ったが
何も言葉が出てこなかった。

自分はいつもそうだ。
リサにはいつも笑っていてほしいのに、
彼女を悲しませるような物言いをしてしまう。
優しくしたいと思っているのに、
真逆のことをしてしまう自分が恨めしい。

昔はそんなんじゃなかった。
両親が国王夫妻と親しくしていたことから
自然とエーリヒはエリザベートと遊ぶようになった。
小さい頃は彼女が王女だなんて気にしたこともなく、
「リサ、リサ」と気軽に呼んでいた。
今では考えられない。

彼女と自分の立場を自覚するようになったのは
王立学院に入学してからだ。
当然と言えば当然だが、
王侯貴族やアッパーミドルクラスの子弟が通う学び舎で
彼女は王女として遇される。
入学当初、それまでと同じように「リサ!」と
気軽に呼びかけたら周囲から大顰蹙をかった。
誰に口を利いているんだと、
先輩や先生方から大目玉を食らった。