マティアスとリラの結婚に際しての
祝賀行事は滞りなく終わり、
今日華燭の典を迎えた。
残すは国王主催の結婚披露晩餐会である。
各国からの招待客や
国内の主だった貴族が出席するもので
エリザベート史上、
最も大規模なパーティーである。

もちろん、
エスコートをお願いしたのはエーリヒだ。
どこかの国の王子のお相手という晴れがましい役目は
嬉々としてリーゼロッテに譲ってあげた。
エーリヒは近衛隊の礼装に身を包んで
一部の隙もない。
「礼装姿もとっても素敵だわ、エーリヒ!」
お世辞でもなんでもなく、
心からの感想をエリザベートは伝える。
「エリザベート様こそ、第一王女に相応しい気品あふれる装いですね。」
対するエーリヒは表情を微動だにせず、
クールな返答だ。

そんな彼の態度に、
エリザベートは内心がっかりする。
もう少し気の利いた一言を
言ってくれても良いんじゃないか。
今日のこの気合いをいれた装いは、
エーリヒに褒めてもらいたいがためなのに。

でも、これが彼のいつも通りなのだ。
こんなことで凹んでいてはいけない。
エーリヒが差し出してくれた腕に
自分のそれをそっと絡めると
エリザベートは意気揚々と
晩餐会の行われる大広間へと踏み出した。