姫と騎士のめぐりあい

女帝陛下主催のガーデンパーティー。
初夏の澄み切った青空の下、
淑女たちの色とりどりのドレスが
華やかに社交場を彩っている。
リーゼロッテの隣にはフィリップが立ち、
満面の笑みで挨拶する。
「遠路はるばるよく来てくださった、マグノリアの姫君。ハイドランジア帝国はリーゼロッテ王女を正式に歓迎する。さぁ、女帝陛下にご挨拶を――」

フィリップに促されるまま、
ゲストたちと歓談する女帝のもとへ歩いていく。
しかしその足取りは重い。
(女帝陛下のもとに行ってしまったら、もう二度と引き返せない気がする。どうしたら良いの、お兄様!)

出発前、不安がるリーゼロッテに
マティアス王太子は大丈夫だと念押しした。
「ロタはガーデンパーティーを楽しむだけでいい。」

女帝まであと数メートル。
その時リーゼロッテの肩に誰かの手が触れた。
「あ、貴方はっ!」
その紳士の顔を見るなり、
リーゼロッテの目は大きく見開かれた。
だってその人は、
謹慎処分中のクラウスその人だったのだから。 
 
「お前、何でここにいるんだっ!お前は謹慎中のはずだぞ。」
リーゼロッテの少し前を歩いていたフィリップも
クラウスの存在に気づき声を上げる。
「貴方のたくらみき気づかないほど私も馬鹿ではありませんからね。女帝陛下の命令に背いたのは申し訳ないが、お叱りは後でいくらでも。」
クラウスも一歩も引く気はないようだ。
1人の女性を間に、
フィリップとクラウスが睨み合う。

その場面を目にした貴族たちがざわめき出す。
「まぁ、フィリップ殿下とクラウス殿下が言い争いを。」
「ではあのご令嬢がリーゼロッテ王女で?」
「なんと華やかな王女様でしょう。我が国の2人の王子を虜にするとはさすがですな。」

「一体何事なの?」
騒ぎを聞きつけた女帝がこちらへと歩いてきた。
リーゼロッテはすかさずカーテシーをする。
「マグノリアの姫君、今日はようこそ私のガーデンパーティーへ。どうぞ楽しんで行ってね。」
ヴィルヘルミーナはリーゼロッテに笑みを向けると、
クラウスの方へ厳しい視線を送る。
「なぜあなたがここに?私は謹慎を命じたはずよ。」

「陛下――陛下の命に背いた私をどうかお許しください。今日ここに来なければ、私は大切な女性を永遠に失ってしまうところだったのです。こちらのリーゼロッテ王女は、私の愛する女性です!結婚の許しを陛下にいただきたく。」

クラウスの一言で、
あれほど陽気な声がざわめいていた
ガーデンパーティーの場が静寂に包まれる。
女帝が眉を上げる。
フィリップが青ざめ、声を荒げた。
「何を――何を言い出すんだ!貴様にはその資格はない!」
「資格?それを決めるのは――彼女の心だ。」

リーゼロッテの瞳から涙が零れる。
クラウスが一歩、二歩と進み出て、
彼女の手を取った。
「リーゼロッテ、君を愛している。貴女も同じ気持ちならどうか私の手を取ってほしい。」
リーゼロッテは何度も頷きながら、
クラウスの手に自分の手を重ねた。

その真摯な告白に、会場がざわめく。
女帝はしばらく沈黙し、やがて微笑んだ。
「……真の誠実こそ、王家の誇り。いいでしょう。二人を祝福します。」

立場をなくしたフィリップは顔を背け、
静かに退場した。
敗北の痛みと、ほんの僅かな敬意を胸に。