余命半年のわたしとお兄様

お兄様との思い出づくりはとっても楽しい。でもそれ以上にこの世界からいなくなってしまうのが寂しい。お兄様と離れてしまうのが寂しい。気づけばお兄様は私にとって必要不可欠な存在になっていた。
そう思っているうちに、楽しんでいるうちに、空は赤みを帯びていった。そんな私たちの前にあったのは橋だった。石造りで下にはオレンジ色の川がある。もちろん夕日に染まってるだけだけど。
「綺麗」
私はついそう漏らしてしまった。お兄様はそれをみて小さく笑った。綺麗に。見惚れてしまうように。でも、お兄様は和歌としてみられなくなった。いつしか活動休止したままの「ワカ」より大切な存在になっていた。
「あいらの方が綺麗」
お兄様は私のことを「妹」としか思ってないのになぜそういう恋人みたいなことを言うんだろう。しばらく私たちの間に沈黙が流れた。お兄様も流石に言い過ぎだと思ったのか顔を赤らめている。
「行って、みない」
先に口を開いたのはお兄様だった。もちろん超ぎこちないけれど。
「うん」
私の返事をしっかり確認してお兄様は橋に進んで行った。太陽はあと少しで見えなくなりそうだ。それはとっても当たり前のこと。でも、もしかしたら私に最期が来ることもこんなに当たり前であっさりとしているのかも知れない。
「僕はさ、あいらにアイドルとしてみられてるの?」
急にお兄様が口を開いた。でもその内容は図星だった。私はお兄様を私が推しているアイドルの「ワカ」として見ていた。お兄様じゃなくてもちろんステージでの嘘もある「ワカ」としてみていた。だから映画会の時もお兄様の反応を「ワカ」としての反応と比べていた。でもそんなにひどくてお兄様が傷つくこと、言えない。
お兄様は私が黙っていることを図星だと感じ取ったかのようにまた、静かに口を開いた。
「これまでのように「アイドルのワカ」として僕を見るのはやめてほしいんだ。だって僕はあいらに兄として接してるんだから。妹は1人だけだけど僕がアイドルだったらあいらは沢山いるファンの1人になっちゃう。それは嫌なんだ。だってあいらは僕にとって大切だから。」
なんでお兄様はこんなことがさらっと言えるのだろう。でもその顔はステージでとは、全く違った。本気にしてるようだし、嘘をついてるようじゃない。
「うん」
そうして今日の遊園地での思い出作りは幕を閉じた。