余命半年のわたしとお兄様

夜。またしも純さん、改めお兄様はやってきた。
「ふふふ。あいらヤッホー」
それも「挨拶」と言う用事で。しかもお兄様てば私のことを呼び捨てにする。だから一日中ドキドキしちゃいそう。あーあ。ドキドキするけど「お兄様」がいるのも悪くないかな。
「用がないなら挨拶だけしないでよ」
つい拗ねてしまう。またそれが兄妹感を出してしまった気がする。
「だってあいらがまだ‘「お兄様」って呼んでくれないんだもん。」
「はいはい、お兄様」
めちゃくちゃ恥ずかしい。顔が真っ赤になった気がする。今のだけで寿命5年は縮んだ。ま、余命半年だからいっか。
朝。私が出掛ける時間になってもお兄様は起きてこない。まいっか先に出かけちゃえ。お兄様が追ってこないといいけど。そう思って私は家を出た。周りに私と同じ制服を着ている人はいない。通っている私が言うのもなんだけど私が通っているのはかなりの名門校。「私立朝春学園」と言うところ。駅で。私はホームで電車を待つ。もちろんここでも同じ制服の人はいない。
「まもなく3番線に朝春学園行き特別快速が参ります。黄色い線の後ろに下がってお待ちください」
聞き慣れたアナウンスが流れる。その赤い電車に私は乗り込んだ。
「あなた、つぎが終点ですよ」
ハッとした。目の前に立っていたのは40歳ぐらいの女の人。知らない人だけどつぎが終点だから起こしてくれたのかな。
「あ、起こしてくれてありがとうございます。ちょうど終点で降りる予定だったんです。」
よかった。気がつくと周りは同じ制服を着た人でいっぱいになっていた。
「ふふ。ならよかったわ。」
私が眠いのは間違いなくお兄様のせいだ。だってお兄様が夜一緒に映画会をしようと言うから「ワカ」と映画を見られるなんて、と思った私は参加しちゃった。けれど「ワカ」がやっていた映画会生放送の時とは全く違ってお兄様は下品に笑い下品に泣いた。「ワカ」だなんて信じられない。もちろんステージでの態度と普段の態度は全く違うと思う。けれどあんなに下品だとは。損したって感じ。もう、お兄様ってば。けれどもこんな日でも私はお兄様のことを考えてしまった。本当にあのイケメンは想像の上をいく。