「私のことは気にしないでいいよ。天香海岸まで結構長く移動に時間がかかるから、無理に今日見に行かなくても大丈夫だし。十真君は帰った方がいいんだと思うよ」
私の言葉を聞いて、十真君はしばらく考え込んでいた。
でも、顔を上げた時の彼からは痛ましい気配は薄れていた。
「エレナさんにはすごく気を遣わせてるよね。ごめん。ただ、このまま帰ったら帰ったで、絶対『俺何しに行ったんだ?』ってぐだぐだ考え込みそうな気がするんだ。今帰ると多分自分に『これ以上何も知りたくない』って言い聞かせたみたいな気分になる」
言われてみれば確かにそうだ。
私だって『きらきらの空』に出てきた場所を見てみようという思いつきに対して、行く前にお姉ちゃんから一真さんが亡くなった話や、周囲が悲しんでいた話を聞いていたら、申し訳なくなって行くのをやめようかと考えるかもしれない。
でも、あの時の私は──映画の中の、それこそきらきらして感じられた一真さんに惹かれるようにして金砂へとやってきた。そんな衝動を完全にゼロにすることができただろうか? できなかっただろうと思う。
まして亡くなったお兄さんのことが絡んでいるのだ。思い出さないはずがなかった。それこそ家に帰って仏壇に飾られている遺影を見た時にでもだ。
「だったらそのまま帰るんじゃなくて、何かほどほどに成果があればいいんじゃないかな。そういえば千波駅から近いところにもロケ地あったよね」
「あ──ゲーセン」
十真君の眼が輝いた。
たったそれだけでものすごく幸せな気持ちになれるような輝き。
その直後に明るい笑みが浮かぶ。
「ゲーセンの場所ははっきり解らないけど、ある程度場所を絞れたらすぐ行けるかもしれないな」
「お姉ちゃんにメッセージ送ってみるね。少しはヒントになることが解るかも」
当時のゲームセンターはもうないんだとしても、もしかしたら他のゲームセンターになっていたりするかもしれない。
スマホを取り出して急いでメッセージを作る。
『映画の中のゲームセンターがあった場所に行ってみようかという話が出ました』
『もうお店がないのはわかってるけど、大体どのへんだったかだけでも知ってたら教えてほしいです』
送信するとあっという間に既読になった。今は運転中じゃないらしい。そしてすぐに返信が届く。
『あのゲーセンは私も行ったけど、北口から歩いて10分くらいのところだよ。二年前通りかかった時には更地になってた。あんまり見るものないかも』
早速届いたメッセージを十真君にも見せる。
「更地じゃ探しようがないよね……」
「そんなことないよ。あのシーン、確かゲーセン以外にも映ってた。ちょっと見てみる」
十真君は自分のスマホを取り出して、動画のゲームセンターのシーンを探している。すぐに見つかったらしく、停止した画面のあるものを指で示した。
すぐ側には居酒屋さんやお蕎麦屋さんがあった。そして十真君はもう少し離れた場所を指さしている。
「このホテル、目印になるはずだよ」
「あ……これ」
泊まったことはなくても、私でも知っている、全国にたくさん展開されているビジネスホテルだった。ゲームセンターから見える位置にホテルが建っていたのだ。
「千波市にいくつこの系列のホテルがあるか解らないけど、10も20もあるとは思えないから、北口から移動できる場所なら多分一軒に絞れる」
「そうだね」
ホテルよりはたくさんチェーン店のあるコンビニすら、場所が解っていればちゃんと普通に辿り着ける。それよりずっと大きくて目立つホテルなら尚更だ。
十真君はそのままホテルを検索し、リストの一軒を指差す。
「北口から行ける場所に一軒だけあるね。ここを目指していけば近くに行けると思うよ。行ってみよう」
「うん」
たったそれだけですごく癒やされたような気がした。
今気付いたけれど、十真君と一緒に歩いて探しに行くことができるのだと思った時、私自身の「海に行くの中止にしよう」という言葉に、自分でも割と傷付いていたみたいだった。
私の言葉を聞いて、十真君はしばらく考え込んでいた。
でも、顔を上げた時の彼からは痛ましい気配は薄れていた。
「エレナさんにはすごく気を遣わせてるよね。ごめん。ただ、このまま帰ったら帰ったで、絶対『俺何しに行ったんだ?』ってぐだぐだ考え込みそうな気がするんだ。今帰ると多分自分に『これ以上何も知りたくない』って言い聞かせたみたいな気分になる」
言われてみれば確かにそうだ。
私だって『きらきらの空』に出てきた場所を見てみようという思いつきに対して、行く前にお姉ちゃんから一真さんが亡くなった話や、周囲が悲しんでいた話を聞いていたら、申し訳なくなって行くのをやめようかと考えるかもしれない。
でも、あの時の私は──映画の中の、それこそきらきらして感じられた一真さんに惹かれるようにして金砂へとやってきた。そんな衝動を完全にゼロにすることができただろうか? できなかっただろうと思う。
まして亡くなったお兄さんのことが絡んでいるのだ。思い出さないはずがなかった。それこそ家に帰って仏壇に飾られている遺影を見た時にでもだ。
「だったらそのまま帰るんじゃなくて、何かほどほどに成果があればいいんじゃないかな。そういえば千波駅から近いところにもロケ地あったよね」
「あ──ゲーセン」
十真君の眼が輝いた。
たったそれだけでものすごく幸せな気持ちになれるような輝き。
その直後に明るい笑みが浮かぶ。
「ゲーセンの場所ははっきり解らないけど、ある程度場所を絞れたらすぐ行けるかもしれないな」
「お姉ちゃんにメッセージ送ってみるね。少しはヒントになることが解るかも」
当時のゲームセンターはもうないんだとしても、もしかしたら他のゲームセンターになっていたりするかもしれない。
スマホを取り出して急いでメッセージを作る。
『映画の中のゲームセンターがあった場所に行ってみようかという話が出ました』
『もうお店がないのはわかってるけど、大体どのへんだったかだけでも知ってたら教えてほしいです』
送信するとあっという間に既読になった。今は運転中じゃないらしい。そしてすぐに返信が届く。
『あのゲーセンは私も行ったけど、北口から歩いて10分くらいのところだよ。二年前通りかかった時には更地になってた。あんまり見るものないかも』
早速届いたメッセージを十真君にも見せる。
「更地じゃ探しようがないよね……」
「そんなことないよ。あのシーン、確かゲーセン以外にも映ってた。ちょっと見てみる」
十真君は自分のスマホを取り出して、動画のゲームセンターのシーンを探している。すぐに見つかったらしく、停止した画面のあるものを指で示した。
すぐ側には居酒屋さんやお蕎麦屋さんがあった。そして十真君はもう少し離れた場所を指さしている。
「このホテル、目印になるはずだよ」
「あ……これ」
泊まったことはなくても、私でも知っている、全国にたくさん展開されているビジネスホテルだった。ゲームセンターから見える位置にホテルが建っていたのだ。
「千波市にいくつこの系列のホテルがあるか解らないけど、10も20もあるとは思えないから、北口から移動できる場所なら多分一軒に絞れる」
「そうだね」
ホテルよりはたくさんチェーン店のあるコンビニすら、場所が解っていればちゃんと普通に辿り着ける。それよりずっと大きくて目立つホテルなら尚更だ。
十真君はそのままホテルを検索し、リストの一軒を指差す。
「北口から行ける場所に一軒だけあるね。ここを目指していけば近くに行けると思うよ。行ってみよう」
「うん」
たったそれだけですごく癒やされたような気がした。
今気付いたけれど、十真君と一緒に歩いて探しに行くことができるのだと思った時、私自身の「海に行くの中止にしよう」という言葉に、自分でも割と傷付いていたみたいだった。
