『今『きらきらの空』の舞台を見るのに金砂高校に来ています』
『そこで伊泉一真さんの弟の十真君に逢って、学校を案内してもらいました』
『家に帰ったらお姉ちゃんの棚からあの冊子を一冊もらってもいい? できればご家族の人に見せられるように渡したいです』
連続してそう送ったら、いきなり通話着信音が鳴った。
『どうしたのエレちゃん! いきなり金砂にいるってびっくりしたよ。そんな聖地巡礼するほど名作の映画だったとは関係者の私にも驚きっていうか……あれそんなに面白かったかな……むしろ話は今ひとつだった気が……』
関係者なので歯に衣着せぬ感想だった。
「う、うーん、映画はそんなでもなかったけど、でも、見てて楽しかったし……つい来ちゃって。後で冊子、余ってるのあげちゃ駄目かな」
『大丈夫。それと伊泉君の弟さんと逢ったんだよね。びっくりしてなかった? いきなり映画の話を聞いて』
多分お姉ちゃんも伊泉家に映画のことを伝えられていなかったのを知っていたのだろう。部員で伝えるべきか、やめておこうかと話し合ったりしたのかもしれない。
「びっくりしてたみたいだけど、楽しそうだったよ。今学校を案内してもらってるところなんだ」
『えっ、そこにいるの? 本人がいるならちょっと代わって。問題なければハンズフリーにしてくれる?』
私は十真君に視線を向ける。
「ハンズフリーで話してても問題なさそう?」
「大丈夫」
確認してからスピーカーボタンを押してハンズフリーにした。
『こんにちは、伊泉君の弟さんなんだね。エレナの姉のアニカです。何だか妹がお世話になったみたいで』
「伊泉十真です。いえ、俺こそ兄ちゃ……兄のことを教えてもらえたりとか嬉しかったから、お世話なんてそういう感じじゃ……」
十真君は少し照れながら挨拶していた。
「それにエレナさんに写真見せてもらって、何だか、あの頃の兄ちゃんこんな風だったんだって思ったら、アルバム見てるみたいな気分でした。俺も今金砂通ってて、知ってるところばっかりだったんで余計に」
『写真?』
「ごめんね。あの写真持ってきちゃったの。なくしたりとかはしてないから」
『あの時使うのに現像しただけだからいいんだけど。それにしても十真君って伊泉君や私の後輩なんだね』
「はい。家のすぐ側だし」
お姉ちゃんも十真君も何だか嬉しそうだった。
そのなごやかな空気に混ざれず、少しだけ嫉妬してしまった。ただ、感じの悪い態度を取ったり拗ねたりするのは嫌だったから我慢して待っていた。
「そういえば映画の中のゲーセンとか海とかって、金砂じゃないですよね。あれってどこだったんですか?」
そうだ。あの映画には金砂市には存在しなさそうな場所も登場していたのだ。
『あー、内陸の金砂じゃ海撮れる訳ないしあのへんゲーセンないんだよね。ゲーセンは映画部の部員の子がバイトしてた、千波駅からちょっと行ったところにあった店なんだけど、あそこもう潰れちゃったんだよね。海のシーンは先生が借りたレンタカーで行った天香海岸で撮影したの』
「天香海岸? 名前は聞いたことあるような」
『県の北の端くらい。天香市だよ』
そう言われて天香市が県の北の端にあることを思い出した。
「確か子供の頃海水浴とか行ったよね」
『そうそう、あの近く。ただ天香海岸は遊泳禁止のところだよ』
「海水浴場じゃないんだ?」
『夏に海水浴場で撮影なんてめちゃくちゃ混むでしょ』
言われてみれば海のシーンでも人はあまりいなかったような気がする。
「でも、行って行けなくない……よね」
千波駅は途中で乗り換えたターミナル駅だから、場所だけは行こうと思えば簡単に立ち寄れる。そこに寄って少し買い物でもしてから虎塚まで帰ってくればいい。一駅だ。
ただ天香市まではそれなりに時間がかかる。自宅を通り越してかなり乗っていかないといけないし、駅から海岸まで歩くと時間もかかるだろう。
ちょうどバスが通っていたりすれば行けるだろうけれど、そうでないなら誰か車を持っている人に連れてきてもらうか、頑張って歩いて移動するしかない。
潰れてしまったゲームセンターは仕方ないかもしれない。でも、海はそのうちでもいいから一度見てみたかった。私は失望を顔に出さないようにそっと溜息をついた。
そんな私の横で、十真君が口を開く。
「天香海岸なんですね。だったら俺行ってきます。今日は暇だし、教えてくれたお礼にエレナさんに写真でも送るんで」
「十真君!?」
いきなり言い出された言葉に、頭が真っ白になった。
『そこで伊泉一真さんの弟の十真君に逢って、学校を案内してもらいました』
『家に帰ったらお姉ちゃんの棚からあの冊子を一冊もらってもいい? できればご家族の人に見せられるように渡したいです』
連続してそう送ったら、いきなり通話着信音が鳴った。
『どうしたのエレちゃん! いきなり金砂にいるってびっくりしたよ。そんな聖地巡礼するほど名作の映画だったとは関係者の私にも驚きっていうか……あれそんなに面白かったかな……むしろ話は今ひとつだった気が……』
関係者なので歯に衣着せぬ感想だった。
「う、うーん、映画はそんなでもなかったけど、でも、見てて楽しかったし……つい来ちゃって。後で冊子、余ってるのあげちゃ駄目かな」
『大丈夫。それと伊泉君の弟さんと逢ったんだよね。びっくりしてなかった? いきなり映画の話を聞いて』
多分お姉ちゃんも伊泉家に映画のことを伝えられていなかったのを知っていたのだろう。部員で伝えるべきか、やめておこうかと話し合ったりしたのかもしれない。
「びっくりしてたみたいだけど、楽しそうだったよ。今学校を案内してもらってるところなんだ」
『えっ、そこにいるの? 本人がいるならちょっと代わって。問題なければハンズフリーにしてくれる?』
私は十真君に視線を向ける。
「ハンズフリーで話してても問題なさそう?」
「大丈夫」
確認してからスピーカーボタンを押してハンズフリーにした。
『こんにちは、伊泉君の弟さんなんだね。エレナの姉のアニカです。何だか妹がお世話になったみたいで』
「伊泉十真です。いえ、俺こそ兄ちゃ……兄のことを教えてもらえたりとか嬉しかったから、お世話なんてそういう感じじゃ……」
十真君は少し照れながら挨拶していた。
「それにエレナさんに写真見せてもらって、何だか、あの頃の兄ちゃんこんな風だったんだって思ったら、アルバム見てるみたいな気分でした。俺も今金砂通ってて、知ってるところばっかりだったんで余計に」
『写真?』
「ごめんね。あの写真持ってきちゃったの。なくしたりとかはしてないから」
『あの時使うのに現像しただけだからいいんだけど。それにしても十真君って伊泉君や私の後輩なんだね』
「はい。家のすぐ側だし」
お姉ちゃんも十真君も何だか嬉しそうだった。
そのなごやかな空気に混ざれず、少しだけ嫉妬してしまった。ただ、感じの悪い態度を取ったり拗ねたりするのは嫌だったから我慢して待っていた。
「そういえば映画の中のゲーセンとか海とかって、金砂じゃないですよね。あれってどこだったんですか?」
そうだ。あの映画には金砂市には存在しなさそうな場所も登場していたのだ。
『あー、内陸の金砂じゃ海撮れる訳ないしあのへんゲーセンないんだよね。ゲーセンは映画部の部員の子がバイトしてた、千波駅からちょっと行ったところにあった店なんだけど、あそこもう潰れちゃったんだよね。海のシーンは先生が借りたレンタカーで行った天香海岸で撮影したの』
「天香海岸? 名前は聞いたことあるような」
『県の北の端くらい。天香市だよ』
そう言われて天香市が県の北の端にあることを思い出した。
「確か子供の頃海水浴とか行ったよね」
『そうそう、あの近く。ただ天香海岸は遊泳禁止のところだよ』
「海水浴場じゃないんだ?」
『夏に海水浴場で撮影なんてめちゃくちゃ混むでしょ』
言われてみれば海のシーンでも人はあまりいなかったような気がする。
「でも、行って行けなくない……よね」
千波駅は途中で乗り換えたターミナル駅だから、場所だけは行こうと思えば簡単に立ち寄れる。そこに寄って少し買い物でもしてから虎塚まで帰ってくればいい。一駅だ。
ただ天香市まではそれなりに時間がかかる。自宅を通り越してかなり乗っていかないといけないし、駅から海岸まで歩くと時間もかかるだろう。
ちょうどバスが通っていたりすれば行けるだろうけれど、そうでないなら誰か車を持っている人に連れてきてもらうか、頑張って歩いて移動するしかない。
潰れてしまったゲームセンターは仕方ないかもしれない。でも、海はそのうちでもいいから一度見てみたかった。私は失望を顔に出さないようにそっと溜息をついた。
そんな私の横で、十真君が口を開く。
「天香海岸なんですね。だったら俺行ってきます。今日は暇だし、教えてくれたお礼にエレナさんに写真でも送るんで」
「十真君!?」
いきなり言い出された言葉に、頭が真っ白になった。
