めぐり逢い 憧れてのち 恋となる【書籍化】

(わあ、なんて素敵!)

花穂は目を輝かせてホールを見渡す。

天井にはきらびやかなシャンデリア。
壁には惜しげもなく使われた高級なカーテン。

装飾や絵画も目を見張るものばかりで、なんともゴージャスな雰囲気だった。

そしてとにかく広い。
丸テーブルがいくつも並べられているが、それでも空間はかなりゆとりがあった。

(ホテルのホームページで調べてはいたけれど、ここまで広いなんて。天井をドーム状にして映像を投影するのも、光る絨毯の演出も、かなり大がかりになる)

花穂は思わずゴクリと喉を鳴らした。

「だいたいですが、記念式典当日のテーブル配置にしてあります。なにかご質問がありましたら、お気軽にどうぞ」

須崎に言われて、花穂は早速平面図を見ながらチェックを始める。  

マイクロファイバーの絨毯を実際に光らせて、照明と絨毯の色味を大森と確認した。

オーロラの布も、背面からライトを当てつつヒダを調節する。

次に天井から吊るす黒幕だが、予想よりもはるかに困難なことが判明する。

「ここまで広いと、幕を綺麗なドーム状に張るのはほぼ不可能ですね」

そう言って花穂が頭を悩ませていると、大地が隣に並んで上を見上げた。

「ドーム状にこだわるな。夜空をイメージさせるのは、プロジェクションマッピングの映像で補える」

え?と、花穂は大地の横顔を見つめた。

「逆にカーブしてない方が映像を投影しやすい。任せろ、俺が最高の夜空を生み出してやる」

不敵な笑みで言い切ってみせる大地に、花穂は思わず言葉を失くす。

大地は小さくポンポンと花穂の頭に手を置いてから歩き出し、大森と相談を始めた。

その場に残された花穂の胸に、4年前の出来事が蘇る。

『じゃあね、デザイナーのひよこちゃん』

その言葉と共に、頭に置かれた大きな手のひらの温もり。

(やっぱりあの人は浅倉さんだったんだ)

花穂はそのことを改めて実感した。