6月になり、美術館の準備もいよいよ大詰め。
無事に全ての映像が整い、先方からもデモンストレーションでOKをもらうことができた。
あとは実際の展示室に設営し、リハーサルを重ねて調整を行い、当日を迎えるだけだ。
七夕を半月後に控え、花穂は引っ越してきた大地のマンションで短冊作りにいそしむ。
ホテル フィオーレのロビーの一角に飾る予定だった。
ローテーブルにたくさんの短冊を広げていると、ただいま、と大地の声がした。
「お帰りなさい」
玄関まで出迎えに行くと、大地は優しく花穂を抱き寄せて頬にキスをする。
「ただいま、花穂」
「お疲れ様でした。すぐに夕食にしますね」
「ああ。ん? これは?」
リビングに入ると、大地はソファの前のローテーブルに目をやる。
「フィオーレの七夕の飾りに使うの。笹の葉に、ゲストが思い思いに願いごとを書いて飾れるように」
「ふうん。色んな柄の短冊があるんだな」
「どれがいいか迷っちゃって。大地さん、あとで一緒に選んでくれる?」
「分かった」
大地が寝室に着替えに行くと、花穂はダイニングテーブルに料理を並べた。
二人で「今日もお疲れ様」と乾杯する。
「美術館の準備、どうですか?」
「ああ、順調。大森がやたら張り切ってるしな。愛する妻と子どもの為にーって」
「ふふっ、あゆちゃんにメロメロですもんね、大森さん」
「俺も花穂ちゃんにメロメロですけど?」
サラッと言われて花穂は思わず固まる。
「えっと、あ! ジュエリーショップの店長に、美術館のアンティークジュエリー展の招待状を持って行かなくちゃ」
「そうだな。今度花穂が行く時に、俺も一緒に行く。改めて挨拶したいし」
「ジュエリーのお話を聞かせてくれたお礼?」
「それもあるけど、結婚の挨拶」
またしても花穂は固まり、ぽろりと箸を落としてしまった。
「えーっと、ゴホン」
「ちゃんと花穂のこと、愛するフィアンセですって紹介しないとな」
「あの、大地さん。ひょっとして、おもしろがってる?」
「バレた?」
もう!と花穂はむくれる。
「だってことあるごとにアピールしないと、花穂、結婚の話進めてくれないだろ」
「それは、だから。美術館の仕事が落ち着いてから考えましょうって……」
なにより花穂は、忙しい大地の身体が心配だった。
「けど、その頃には別の新しい仕事に追われてるかもしれないぞ? だからもう結婚しよう」
「そんなに急がなくても、結婚は逃げませんよ?」
「花穂は逃げるかもしれないだろ」
「逃げませんよ。どうして私が大地さんから逃げるの? こんなに大好きなのに」
すると今度は大地が顔を赤くして固まった。
「大地さん? もしもし?」
「……ずるいぞ、そんな不意打ち」
「え?」
「油断させておいて、そんな可愛い爆弾投げてくるな」
「爆弾!?」
「破壊力バツグンだ。花穂、食事はあとにして寝室に行こう」
「だ、だめ!」
立ち上がって手を引こうとする大地を、花穂は慌てて止める。
「ちゃんと食べてから。ね?」
「仕方ないな。じゃあ、続きは?」
「……Webで」
「ベッドで!」
真顔で怒る大地に、花穂は真っ赤になったまま、目も合わせられずにいた。
無事に全ての映像が整い、先方からもデモンストレーションでOKをもらうことができた。
あとは実際の展示室に設営し、リハーサルを重ねて調整を行い、当日を迎えるだけだ。
七夕を半月後に控え、花穂は引っ越してきた大地のマンションで短冊作りにいそしむ。
ホテル フィオーレのロビーの一角に飾る予定だった。
ローテーブルにたくさんの短冊を広げていると、ただいま、と大地の声がした。
「お帰りなさい」
玄関まで出迎えに行くと、大地は優しく花穂を抱き寄せて頬にキスをする。
「ただいま、花穂」
「お疲れ様でした。すぐに夕食にしますね」
「ああ。ん? これは?」
リビングに入ると、大地はソファの前のローテーブルに目をやる。
「フィオーレの七夕の飾りに使うの。笹の葉に、ゲストが思い思いに願いごとを書いて飾れるように」
「ふうん。色んな柄の短冊があるんだな」
「どれがいいか迷っちゃって。大地さん、あとで一緒に選んでくれる?」
「分かった」
大地が寝室に着替えに行くと、花穂はダイニングテーブルに料理を並べた。
二人で「今日もお疲れ様」と乾杯する。
「美術館の準備、どうですか?」
「ああ、順調。大森がやたら張り切ってるしな。愛する妻と子どもの為にーって」
「ふふっ、あゆちゃんにメロメロですもんね、大森さん」
「俺も花穂ちゃんにメロメロですけど?」
サラッと言われて花穂は思わず固まる。
「えっと、あ! ジュエリーショップの店長に、美術館のアンティークジュエリー展の招待状を持って行かなくちゃ」
「そうだな。今度花穂が行く時に、俺も一緒に行く。改めて挨拶したいし」
「ジュエリーのお話を聞かせてくれたお礼?」
「それもあるけど、結婚の挨拶」
またしても花穂は固まり、ぽろりと箸を落としてしまった。
「えーっと、ゴホン」
「ちゃんと花穂のこと、愛するフィアンセですって紹介しないとな」
「あの、大地さん。ひょっとして、おもしろがってる?」
「バレた?」
もう!と花穂はむくれる。
「だってことあるごとにアピールしないと、花穂、結婚の話進めてくれないだろ」
「それは、だから。美術館の仕事が落ち着いてから考えましょうって……」
なにより花穂は、忙しい大地の身体が心配だった。
「けど、その頃には別の新しい仕事に追われてるかもしれないぞ? だからもう結婚しよう」
「そんなに急がなくても、結婚は逃げませんよ?」
「花穂は逃げるかもしれないだろ」
「逃げませんよ。どうして私が大地さんから逃げるの? こんなに大好きなのに」
すると今度は大地が顔を赤くして固まった。
「大地さん? もしもし?」
「……ずるいぞ、そんな不意打ち」
「え?」
「油断させておいて、そんな可愛い爆弾投げてくるな」
「爆弾!?」
「破壊力バツグンだ。花穂、食事はあとにして寝室に行こう」
「だ、だめ!」
立ち上がって手を引こうとする大地を、花穂は慌てて止める。
「ちゃんと食べてから。ね?」
「仕方ないな。じゃあ、続きは?」
「……Webで」
「ベッドで!」
真顔で怒る大地に、花穂は真っ赤になったまま、目も合わせられずにいた。



