めぐり逢い 憧れてのち 恋となる【書籍化】

(大地さん、どこに行ったんだろう)

ブーケトスが終わって女の子たちが散らばると、花穂も大地の姿を探して辺りを見渡した。

(あ、いた!)

プールサイドのバーカウンターに座り、大地は笹本とお酒を飲みながら談笑している。

(お邪魔かな)

そう思ってしばらくその場から見つめていると、ふと大地が顔を上げた。

「花穂、おいで」
「はい」

呼ばれて花穂は、おずおずと近づく。

大地は待ちきれないとばかりに手を伸ばし、花穂のウエストを抱き寄せた。

「花穂さん、ナイスキャッチ。織江もなかなかいい腕してたな」

花穂が胸に抱えたブーケに目をやりながら、笹本が笑う。

「あ、ええ。素敵なブーケをありがとうございます」
「どういたしまして。花穂さんに受け取ってもらえて、俺も嬉しいです。浅倉さん、おめでたいお知らせを首を長くしてお待ちしていますね。それでは」

にっこり微笑んで笹本は織江のもとへと歩いて行く。
見送っていると、グッと大地が花穂を抱き寄せた。

「花穂、俺のそばを離れるなよ。声をかけようとしてるやつらがいる」
「ええ? どこに?」
「プールの反対側。まだ諦めてないな、まったく」

そう言うと、大地はいきなり花穂の耳元にキスをした。

「ちょ、大地さん! こんなところでなにを……」

花穂は真っ赤になって耳を押さえる。

「虫除け」
「え、虫飛んでる?」

宙に目をやる花穂に、大地は吹き出して笑う。

「ははっ、飛んでる飛んでる。ほらまた」

そう言って今度は左頬にキスをした。

「大地さん! 虫はパチンって叩かないと」
「花穂の可愛いほっぺたを叩ける訳ないだろ。あ、また」

大地は楽しそうに、花穂の右の頬にもチュッとキスをする。

「大地さん!」

花穂はブーケを持った手で頬を押さえてガードする。
すると大地がその手を上から握りしめた。

「え?」

顔を上げると、大地が切なそうに花穂を見つめている。

「大地さん……」

ブーケで隠しながら、大地は花穂の頬を手のひらで包み、その唇に優しくそっとキスをした。