「浅倉さん、お待たせしました」
定時になると、花穂はエレベーターで1階に下り、ロビーのソファに座っている大地に駆け寄った。
「お疲れ、俺も今来たとこ。じゃあまずはメシ行くか。前と同じバーでいい?」
「はい、もちろんです」
大地はビルを出るとタクシーを捕まえる。
「えっ、徒歩で行かないんですか?」
「いいからさっさと乗れ。疲れてるだろ」
追いやられるように乗り込むが、どうやら自分を気遣ってくれているらしいと分かり、花穂は思わずニヤける。
「なんだよ? 気味が悪いな」
「ちょっと! 女子に向かってなんてこと言うんですか」
「相手が普通の女子だったら『なにかいいことでもあったのかい?』って言う」
「じゃあ私にもそう言ってくださいよ」
おかしいな、いつからこんな扱いに?と花穂は唇を尖らせてそっぽを向いた。
バーに着くと、マスターが二人を見てにこやかな笑顔を浮かべる。
「いらっしゃいませ。またお越しいただけて、嬉しいです。どうぞお好きな席へ」
「こんばんは、マスター。お邪魔します」
以前と同じ窓際の席に着き、花穂はまたしてもうっとりと窓の外の夜景に見とれた。
「青山、お酒はナシな。ドリンクと料理、なにがいい?」
「じゃあ、ノンアルコールカクテルをお任せでお願いします。お料理も」
「分かった」
大地はマスターにオーダーを済ませると、かばんからタブレットを取り出す。
「ショップの装飾のイメージ画像だ。材料は既にショップに届けてある。飾りつけを手伝ってくれると嬉しい」
「承知しました。わあ、素敵なデザインですね。クリスタルのイメージですか?」
「ああ。あのジュエリーブランドは、洗練されたワンランク上のハイブランドだ。雪とかツリーとか、ましてやサンタさんとかを露骨に並べたくない」
「確かに。クリスタルパレスって感じですね」
クリスタルパレス、と大地は花穂の言葉を呟いた。
「うん、まさにそんなイメージだ。ジュエリーがひときわ高貴な印象になるように、空間をデザインしてほしい」
「かしこまりました。あー、もう、早くやりたくてうずうずします」
「閉店まではまだ時間がある。ゆっくり食べてから行こう」
「はい。わくわく」
どうにも気持ちが口をついて出てしまう。
大地は苦笑いしながら、運ばれてきた料理を花穂の前に並べた。
「美味しそうですね。カルパッチョにラビオリに、ビーフストロガノフだ! いただきまーす」
「おい、乾杯もしないのか?」
「え、浅倉さんって結構ロマンチスト?」
「なんでだよ!? 普通だろ」
「じゃあ、乾杯!」
「やれやれ……」
仕方がないとばかりにグラスを掲げる大地と乾杯してから、花穂は早速料理を食べ始める。
「どれも美味しい! あー、お酒が飲みたくなっちゃう」
「今夜は我慢しろ。また今度な」
「また来てもいいんですか?」
「それは今夜の働きぶりによる」
「はい! お酒の為にがんばります」
「お酒の為にはがんばらんでいい」
賑やかに言い合いながら食事を終えると、改めて大地が花穂に切り出した。
定時になると、花穂はエレベーターで1階に下り、ロビーのソファに座っている大地に駆け寄った。
「お疲れ、俺も今来たとこ。じゃあまずはメシ行くか。前と同じバーでいい?」
「はい、もちろんです」
大地はビルを出るとタクシーを捕まえる。
「えっ、徒歩で行かないんですか?」
「いいからさっさと乗れ。疲れてるだろ」
追いやられるように乗り込むが、どうやら自分を気遣ってくれているらしいと分かり、花穂は思わずニヤける。
「なんだよ? 気味が悪いな」
「ちょっと! 女子に向かってなんてこと言うんですか」
「相手が普通の女子だったら『なにかいいことでもあったのかい?』って言う」
「じゃあ私にもそう言ってくださいよ」
おかしいな、いつからこんな扱いに?と花穂は唇を尖らせてそっぽを向いた。
バーに着くと、マスターが二人を見てにこやかな笑顔を浮かべる。
「いらっしゃいませ。またお越しいただけて、嬉しいです。どうぞお好きな席へ」
「こんばんは、マスター。お邪魔します」
以前と同じ窓際の席に着き、花穂はまたしてもうっとりと窓の外の夜景に見とれた。
「青山、お酒はナシな。ドリンクと料理、なにがいい?」
「じゃあ、ノンアルコールカクテルをお任せでお願いします。お料理も」
「分かった」
大地はマスターにオーダーを済ませると、かばんからタブレットを取り出す。
「ショップの装飾のイメージ画像だ。材料は既にショップに届けてある。飾りつけを手伝ってくれると嬉しい」
「承知しました。わあ、素敵なデザインですね。クリスタルのイメージですか?」
「ああ。あのジュエリーブランドは、洗練されたワンランク上のハイブランドだ。雪とかツリーとか、ましてやサンタさんとかを露骨に並べたくない」
「確かに。クリスタルパレスって感じですね」
クリスタルパレス、と大地は花穂の言葉を呟いた。
「うん、まさにそんなイメージだ。ジュエリーがひときわ高貴な印象になるように、空間をデザインしてほしい」
「かしこまりました。あー、もう、早くやりたくてうずうずします」
「閉店まではまだ時間がある。ゆっくり食べてから行こう」
「はい。わくわく」
どうにも気持ちが口をついて出てしまう。
大地は苦笑いしながら、運ばれてきた料理を花穂の前に並べた。
「美味しそうですね。カルパッチョにラビオリに、ビーフストロガノフだ! いただきまーす」
「おい、乾杯もしないのか?」
「え、浅倉さんって結構ロマンチスト?」
「なんでだよ!? 普通だろ」
「じゃあ、乾杯!」
「やれやれ……」
仕方がないとばかりにグラスを掲げる大地と乾杯してから、花穂は早速料理を食べ始める。
「どれも美味しい! あー、お酒が飲みたくなっちゃう」
「今夜は我慢しろ。また今度な」
「また来てもいいんですか?」
「それは今夜の働きぶりによる」
「はい! お酒の為にがんばります」
「お酒の為にはがんばらんでいい」
賑やかに言い合いながら食事を終えると、改めて大地が花穂に切り出した。



