めぐり逢い 憧れてのち 恋となる【書籍化】

♣♣♣

(俺の方こそ青山に助けられた。またこうやって、心からの充実感を味わわせてもらえた)

大地は手元の缶を見つめて、心の中で呟く。

いつ以来だろう?
こんなにも仕事にやりがいを感じたのは。

3人で力を合わせてプロジェクトに取り組み、成功を分かち合えた。

クライアントにもゲストにも、笑顔で喜ばれた。

自分がやりたかった仕事は、まさにこれだ。
そう感じて、心が晴れ晴れと明るくなった。

(4年前のあの子に、こんなふうに助けられるとはな)

そう思って顔を上げると、隣で花穂はソファにもたれて眠りに落ちていた。

無防備であどけないその寝顔に、大地は、ふっと笑みをもらす。

(やっぱりまだまだ可愛らしいな)

そう思いながら、花穂の肩を揺する。

「青山? ほら、部屋に行ってベッドで寝ろ」
「んー……、やだ。眠いもん」
「やだじゃない。ったくもう……」

何度か声をかけるが、返事も返ってこなくなった。

大地はテーブルに缶を置くと、やれやれとため息をついてから花穂を抱き上げる。

そのまま寝室に運び、そっとベッドに寝かせた。

花穂は気持ち良さそうに身体をベッドに預けて、スーッと寝入る。

大地はベッドの端に腰掛け、花穂の寝顔を見つめた。

最初は控えめに織江の影に隠れ、自信もなさそうな印象だったが、いつの間にこんなに頼もしくなったのだろう?

(4年前に俺と少し話したことがきっかけで、この会社に入ろうと思ってくれた。ほんの少しでも俺に憧れてくれたのか?)

そう思うと素直に嬉しかった。

手を伸ばし、優しく花穂の頭をポンポンとなでながら呟く。

「大きく羽ばたいたな、ひよこちゃん」

すると花穂は、ふふっと頬を緩めた。

(幸せそうな顔して、夢でも見てるのか?)

柔らかい花穂の頬をフニフニと優しく摘むと、思わず大地も頬が緩む。

ふと、鳥のヒナは生まれて初めて見た相手を親だと思い込んでついて行くことを思い出した。

花穂も、自分に無垢な視線を向けてくれている。
そんな気がした。

「ずっと俺のそばにいろよ」

大地は花穂の耳元でそうささやくと、もう一度ポンと頭に手を置いてから立ち上がり、部屋をあとにした。