「ふわー、眠い。せっかくの豪華な部屋を楽しみたいけど、眠気には勝てん。おやすみー」
ふらふらと寝室に向かう大森を、花穂は「おやすみなさい」と見送る。
須崎が3人の為に用意してくれたのは、ゴージャスなセミスイートルームだった。
広いリビングを挟んで左右に寝室が2つある。
大地と大森がツインベッドルームを、花穂がダブルベッドの部屋を使うことになっていた。
「青山も部屋で休め。もう1時だぞ。本番は明日なんだからな」
「はい。それでは、おやすみなさい」
「ああ、おやすみ」
大地に挨拶して、花穂はダブルルームに行く。
ふう、とソファに腰を下ろすと、ローテーブルに置いたバッグを手に取り、中を確認した。
(えっと、フラワーアレンジメントが朝ホテルに届くから、そしたらこのグリーンを仕込む作業をしなくちゃ)
事前にフラワーアレンジメントのサンプルは写真でもらっていたが、実際に見てみるまではどんな具合か分からない。
(この数で足りるかな? お花のボリュームが思ったよりも少なかったら、マイクロファイバーの花びらも追加しようかな)
とにかく色んなシチュエーションに対応できるよう、花穂は頭の中でシミュレーションしながら材料を並べてみた。
(念の為、もう少しグリーンを作っておこうかな)
そう思い、導光ファイバーを織り込んだ茎や葉っぱを作っていく。
すると、コンコンとドアがノックされた。
「えっ? はい」
驚いて顔を上げると「俺だ」と大地の声がした。
「浅倉さん? どうかしましたか?」
立ち上がってドアを開けに行くと、パスローブを着た大地が立っていた。
シャワーを浴びたらしく、髪も無造作に下ろしている。
「まだ寝てなかったのか。ドアから明かりがもれてる」
「あっ、ごめんなさい。これだけやったら寝ますので」
「なにをやっている?」
そう言って大地は、花穂の肩越しに部屋を覗き込んだ。
「明日フラワーアレンジメントが届いて、もしお花のボリュームが少なかったらと心配になって」
「追加で仕込みを作ってたのか」
「はい、そうです」
大地は小さくため息をつく。
「青山、リスクマネジメントも大事だが、セルフコントロールも同じくらい大切だ。寝不足では判断力に欠けて、ベストなパフォーマンスはできない」
「……は、い……?」
「おい、なんだその気の抜けた返事は」
「いえ、あの。英語で話されると理解するのが大変で」
「は? 俺は日本語をしゃべってるが?」
「そうなんですか?」
大地はこめかみを押さえながら「またこれか」と呟いた。
「なんで俺とお前はこうも日本語が通じないんだ?」
「私は日本語は分かりますが、英語が苦手なので」
「だから! 俺も日本語でしゃべってるってば」
「ええー、そうでしたか?」
「もういい! とにかく寝ろ」
「じゃあ、区切りのいいところまでやったら……」
「だめだ。今、区切れ。寝ろ」
区切れと言われても……と、花穂は途方に暮れる。
「青山が寝るまでここで見張ってるからな」
「はいー? 堂々と覗き?」
「違う。作業をやめてベッドに入るのを確かめるだけだ」
「シャワーと着替えの時は?」
「…………」
「覗くんだ」
「覗くか! いいから、ほら。さっさと片づけろ」
はーい、と花穂は渋々テーブルを片づける。
「ではシャワーを浴びてきます。もう見張らなくても大丈夫ですよ」
「……そうか。じゃあ、おやすみ」
「おやすみなさい」
大地が部屋から出て行くと、花穂は再びテーブルに材料を広げた。
するとカチャッとドアが開く。
「青山!やっぱりお前はー」
「ひっ! 覗き魔、変態!」
「誰が変態だ。早く寝ろ!」
ひえっと首をすくめ、花穂は仕方なくバスルームに向かった。
ふらふらと寝室に向かう大森を、花穂は「おやすみなさい」と見送る。
須崎が3人の為に用意してくれたのは、ゴージャスなセミスイートルームだった。
広いリビングを挟んで左右に寝室が2つある。
大地と大森がツインベッドルームを、花穂がダブルベッドの部屋を使うことになっていた。
「青山も部屋で休め。もう1時だぞ。本番は明日なんだからな」
「はい。それでは、おやすみなさい」
「ああ、おやすみ」
大地に挨拶して、花穂はダブルルームに行く。
ふう、とソファに腰を下ろすと、ローテーブルに置いたバッグを手に取り、中を確認した。
(えっと、フラワーアレンジメントが朝ホテルに届くから、そしたらこのグリーンを仕込む作業をしなくちゃ)
事前にフラワーアレンジメントのサンプルは写真でもらっていたが、実際に見てみるまではどんな具合か分からない。
(この数で足りるかな? お花のボリュームが思ったよりも少なかったら、マイクロファイバーの花びらも追加しようかな)
とにかく色んなシチュエーションに対応できるよう、花穂は頭の中でシミュレーションしながら材料を並べてみた。
(念の為、もう少しグリーンを作っておこうかな)
そう思い、導光ファイバーを織り込んだ茎や葉っぱを作っていく。
すると、コンコンとドアがノックされた。
「えっ? はい」
驚いて顔を上げると「俺だ」と大地の声がした。
「浅倉さん? どうかしましたか?」
立ち上がってドアを開けに行くと、パスローブを着た大地が立っていた。
シャワーを浴びたらしく、髪も無造作に下ろしている。
「まだ寝てなかったのか。ドアから明かりがもれてる」
「あっ、ごめんなさい。これだけやったら寝ますので」
「なにをやっている?」
そう言って大地は、花穂の肩越しに部屋を覗き込んだ。
「明日フラワーアレンジメントが届いて、もしお花のボリュームが少なかったらと心配になって」
「追加で仕込みを作ってたのか」
「はい、そうです」
大地は小さくため息をつく。
「青山、リスクマネジメントも大事だが、セルフコントロールも同じくらい大切だ。寝不足では判断力に欠けて、ベストなパフォーマンスはできない」
「……は、い……?」
「おい、なんだその気の抜けた返事は」
「いえ、あの。英語で話されると理解するのが大変で」
「は? 俺は日本語をしゃべってるが?」
「そうなんですか?」
大地はこめかみを押さえながら「またこれか」と呟いた。
「なんで俺とお前はこうも日本語が通じないんだ?」
「私は日本語は分かりますが、英語が苦手なので」
「だから! 俺も日本語でしゃべってるってば」
「ええー、そうでしたか?」
「もういい! とにかく寝ろ」
「じゃあ、区切りのいいところまでやったら……」
「だめだ。今、区切れ。寝ろ」
区切れと言われても……と、花穂は途方に暮れる。
「青山が寝るまでここで見張ってるからな」
「はいー? 堂々と覗き?」
「違う。作業をやめてベッドに入るのを確かめるだけだ」
「シャワーと着替えの時は?」
「…………」
「覗くんだ」
「覗くか! いいから、ほら。さっさと片づけろ」
はーい、と花穂は渋々テーブルを片づける。
「ではシャワーを浴びてきます。もう見張らなくても大丈夫ですよ」
「……そうか。じゃあ、おやすみ」
「おやすみなさい」
大地が部屋から出て行くと、花穂は再びテーブルに材料を広げた。
するとカチャッとドアが開く。
「青山!やっぱりお前はー」
「ひっ! 覗き魔、変態!」
「誰が変態だ。早く寝ろ!」
ひえっと首をすくめ、花穂は仕方なくバスルームに向かった。



