めぐり逢い 憧れてのち 恋となる【書籍化】

花びらの演出については、アトリウムでシミュレーションしたことでかなりイメージが固まった。

次に、バンケットホールでの内容も詰めていく。

ゲストのテーブルに置かれたフラワーアレンジメントが光る演出は、中にLEDライトの芯を仕込んでおいてプログラミングによって光らせるが、試してみると花穂は落胆した。

「なんだかイメージと違いました。これだと人工的な感じがして、魔法がかかるどころか現実に引き戻されそう……」
「じゃあ別の演出に替えるか?」

大地に言われて、花穂は考え込む。

「そうですね……。少しお時間いただけますか?」
「……分かった。無理はするなよ」
「はい」

心配そうな大地と大森の視線を感じつつ、花穂は会議室をあとにする。

オフィスのデスクで何度もデザイン画を描き直すが、ピンと来なかった。

(織江さん。こんな時はどうしたらいいですか?)

ふと心の中でそう問いかけた。

するとかつて言われた織江の言葉が脳裏に蘇る。

『花穂、行き詰まった時はオフィスにいても無駄よ。外に出て気分転換するの。違った角度から、なにかが見えてくるかもしれないわ』

そうだ、ここにいても視野が狭くなり、気分が暗くなるだけだ。

外に出て、色んなものに目を向けてみよう。

よし、と頷くと、定時の18時になるやいなや、花穂はオフィスを出た。