「私はあなたが好きです……って、すごく難しい文法の日本語なんですよ」
「…………は?」
思い切り声が裏返る。
大地の思考回路は完全に固まった。
(な、なにを言っている?)
花穂は人差し指を立てて、じっと大地を見つめる。
「いいですか? 『私はあなたが好きです』って、主語は『私』、『好きです』が述語なんです。で、『あなた』は目的語だと思うじゃないですか。でも違うんです!」
「は、はあ」
「なんと、この場合の『あなた』は、中の構文の主語に当たるって説があるんですよ。すごくないですか?」
「そ、そうですね」
「だから告白するなら、もっと別の言い方がおすすめですよ」
「そうですか。ではなんと?」
「ずばり『私はあなたを愛しています』。これなら『あなた』は目的語になりますから、非常にシンプルなんです」
「なるほど」
「難しいですよね、日本語って。『あなたが好きです』だとちゃんとした告白になるのに『あなたが愛しています』だと、誰を? ってなるんですよ」
もはや内容は全く頭に入ってこない。
逆に、よく酔っ払いながらこんな話ができるなと感心した。
「承知しました。告白する時は『好きです』ではなく、『愛しています』を使えばいいんですね?」
「おっしゃる通り! でもね、もっとシンプルに言ってもいいんですよ」
「なんて?」
「アイラブユーって」
ガクッと大地は肩透かしを食らう。
「それ、もはや日本語じゃないだろ」
「いいんです! 伝わればそれで。大事なのは心ですから」
「まあ、そうだな。じゃあ青山も伝えてみたら? 4年間ずっと好きだった人に」
「好き、だった人?」
花穂は小さく呟いてうつむく。
「そんなひとことでは済ませられません。だって、私をデザイナーにしてくれた人だから」
へえ、と大地は興味を惹かれた。
「その人は、どうやって青山をデザイナーにしてくれたんだ?」
「それは、えっと。頭ポンポンして、ひよこちゃんって……」
「……は?」
「やだ! もう、言わせないでくださいよ」
花穂は真っ赤になった頬を両手で押さえて身悶える。
大地はポカンとしながら頭の中を整理した。
(なんだ? 4年前に頭をポンポンされて、どうやったらデザイナーになるんだ? しかもひよこちゃんって?)
しばし考え込んだあと、大地はハッとした。
「…………は?」
思い切り声が裏返る。
大地の思考回路は完全に固まった。
(な、なにを言っている?)
花穂は人差し指を立てて、じっと大地を見つめる。
「いいですか? 『私はあなたが好きです』って、主語は『私』、『好きです』が述語なんです。で、『あなた』は目的語だと思うじゃないですか。でも違うんです!」
「は、はあ」
「なんと、この場合の『あなた』は、中の構文の主語に当たるって説があるんですよ。すごくないですか?」
「そ、そうですね」
「だから告白するなら、もっと別の言い方がおすすめですよ」
「そうですか。ではなんと?」
「ずばり『私はあなたを愛しています』。これなら『あなた』は目的語になりますから、非常にシンプルなんです」
「なるほど」
「難しいですよね、日本語って。『あなたが好きです』だとちゃんとした告白になるのに『あなたが愛しています』だと、誰を? ってなるんですよ」
もはや内容は全く頭に入ってこない。
逆に、よく酔っ払いながらこんな話ができるなと感心した。
「承知しました。告白する時は『好きです』ではなく、『愛しています』を使えばいいんですね?」
「おっしゃる通り! でもね、もっとシンプルに言ってもいいんですよ」
「なんて?」
「アイラブユーって」
ガクッと大地は肩透かしを食らう。
「それ、もはや日本語じゃないだろ」
「いいんです! 伝わればそれで。大事なのは心ですから」
「まあ、そうだな。じゃあ青山も伝えてみたら? 4年間ずっと好きだった人に」
「好き、だった人?」
花穂は小さく呟いてうつむく。
「そんなひとことでは済ませられません。だって、私をデザイナーにしてくれた人だから」
へえ、と大地は興味を惹かれた。
「その人は、どうやって青山をデザイナーにしてくれたんだ?」
「それは、えっと。頭ポンポンして、ひよこちゃんって……」
「……は?」
「やだ! もう、言わせないでくださいよ」
花穂は真っ赤になった頬を両手で押さえて身悶える。
大地はポカンとしながら頭の中を整理した。
(なんだ? 4年前に頭をポンポンされて、どうやったらデザイナーになるんだ? しかもひよこちゃんって?)
しばし考え込んだあと、大地はハッとした。



