めぐり逢い 憧れてのち 恋となる【書籍化】

♣♣♣

「私ねー、織江さんと別れてから、ひとりでがんばってるんですよー。でもねー、やっぱり寂しくて」

3杯目のウイスキーのグラスを傾けながら、呂律の回らない口調で花穂が話し出す。
頬は赤く、目もトロンとしていて、どう見ても酔っ払っていた。

「青山、その辺にしとけ」

そう言って大地はマスターに目配せし、ミネラルウォーターを頼んだ。

「ほら、飲めるか?」
「はい」

花穂は素直にミネラルウォーターを飲んだが、そのあとにまたウイスキーをグイッとあおる。

「あっ、こら」

手元からグラスを取り上げたが、時すでに遅し、中身は空っぽだった。

「織江さんはねー、私の心の支えだったんです。辛い時も嬉しい時も、いつも織江さんと一緒だった。フィオーレのプロジェクトも、織江さんとやりたかったな。がんばってるねって、頭をポンポンしてもらいたかった」
「じゃあそれは、恋人に頼んだらどうだ?」
「ポンポンを? えー、お願いしたらやってくれるかなー? でも恋人じゃないからだめかも」

ん?と大地は首をひねる。

(まだ恋人ではなく、片思いの相手がいるってことか?)

すると花穂が続けた。

「4年前はポンポンしてくれたから、またやってくれるかな?」

4年前?
そんなに長い間、片思いをしているのだろうか。

「思い切って告白してみたらどうだ?」
「なんて?」
「それはまあ、ストレートに。あなたが好きですって」
「あなたが、好きです……?」

花穂は小さく呟くと、いきなりズイッと顔を寄せてきた。

「わっ、なんだ?」
「浅倉さん」
「え……」

大地の胸がドキッと跳ねる。

(もしや、俺に……?)

次に花穂が口にする言葉を、ドキドキしながら待った。