めぐり逢い 憧れてのち 恋となる【書籍化】

依頼を受けたホテル フィオーレのオープニングセレモニーは、3ヶ月後の11月21日。

花穂は連日、大地や大森と打ち合わせを重ねた。

「9月初旬には先方にプランを提示して、OKをもらいたい。青山、今考えてるアイデアは?」
「はい。フィオーレという名前にちなんで、花をテーマにするのはどうでしょう? 場所も、招待されたゲストとマスコミしか入れないバンケットホールだけでなく、ロビーもインスタレーション、つまり空間全体をデザインして演出します」
「うん、いいな。具体的には?」

花穂はCGで描き起こしたデザイン画を見せながら、大地と大森に説明する。

「まずはロビーですが、演出のテーマは『光の花びら』です。天井からオーガンジー素材の花びらを、シャワーのように何百枚も吊るします。布に導光ファイバーを織り込み、花びらが内側から光る仕組みです」

へえ、と大森が興味深そうに頷いた。

「それいいな。光をプログラミングで制御して、カラフルに演出できると思う。色を変えたり、光るタイミングをずらしたり」

そうだな、と言って大地も提案する。

「あとは吊るしてあるワイヤーを回転モーターでねじったり、小型ファンで風を送って花びらを揺らすのはどうだ?」
「素敵! ぜひお願いしたいです。床にも同じように光る花びらを敷き詰めたいと思っています。それからバンケットホールの方は、前回同様プロジェクションマッピングをメインに。それと連動して、ゲストのテーブルに置かれたフラワーアレンジメントが内側から淡く光る演出はどうでしょう? 中にLEDライトを仕込んでおいて」
「なるほど。前方に映し出されるプロジェクションマッピングから飛び出して、すぐ目の前の花も光り出す……。いいな、魔法がかかるような感じで。映像もそんなふうに考えておく」
「ありがとうございます」

花穂は大地に笑顔でお礼を言う。

魔法をかけるイメージは常に花穂の頭の中にあり、それを大地が感じ取ってくれたことが嬉しかった。

「よし、この案で先方と話をしてみる。二人ともそれぞれ資料にまとめておいてくれるか? できあがり次第、須崎さんに提案しに行く」
「はい!」

早速3人はそれぞれ作業を始めた。