めぐり逢い 憧れてのち 恋となる【書籍化】

翌日には、早速3人での打ち合わせに入る。

「須崎さんからプロデュース部に正式な依頼があった。これがその概要だ」

大地が差し出した資料に、花穂と大森はすぐさま目を通す。

「ん? ホテル フィオーレ? セレストじゃないのか?」

大森の問いかけに、花穂も不思議に思って大地に目を向けた。

「ホテル フィオーレは、新しくオープンする系列ホテルだそうだ。そこの支配人に、須崎さんが就任するらしい」
「へえ! 須崎さんが支配人に?」
「ああ。その記念すべきオープニングセレモニーの演出を、俺たち3人に依頼したいとのことだった」

ひえ!と花穂は思わず両手で頬を押さえる。

「そ、そんな大切なセレモニーの演出を? 失敗は許されないですよね」

すると大地が冷たく言い放った。

「失敗が許される仕事なんてない。大切ではないセレモニーもな。そんな見方で仕事を区別するな」
「はい、申し訳ありません」

きつい口調に萎縮してしまったが、言われていることはもっともだと、花穂は素直に頭を下げる。

「青山」
「はい」

呼ばれて恐る恐る顔を上げると、意外にも大地の表情は穏やかだった。

「心配するな。お前はひとりじゃない。この俺が失敗なんてさせる訳ないだろ?」

ニヤリと不敵な笑みを向けられて、花穂は思わず目をしばたたかせる。

返す言葉に詰まっていると、「おいおい」と大森が横槍を入れた。

「なーに二人の世界に浸ってんだよ。俺を忘れるなって。花穂ちゃん、いつでも俺の胸に飛び込んでおいで。さあ!」

大きく腕を広げた大森の胸を、大地がバシッとはたく。

「いってえなー。なんで大地が飛び込んでくるんだよ」
「飛び込んでねーわ!」

花穂は眉をハの字に下げながら、「まあまあ」と二人をなだめる。

(こういう役も、織江さんのあとを引き継がなきゃいけないのね)

今度会ったら話を聞いてもらおうと、花穂は織江を懐かしみながら笑みを浮かべていた。