アンチさんと話したあの日から、てんやわんやしているうちに初配信の日がやってきた。
縦型動画の投稿を欠かさないだけでも大変だったし、配信の初めに流す待機画面、終わった後のエンディング画面を用意するのがわりとキツくて……。
もちろん防音材の購入と設置もやったし。
そうそう、アンチが来たときどうするかってのも話した。
当然だけど会うなんてのはNG。無視するのが大前提だ。
問題は、どれくらいでブロック・ミュート・タイムアウトにするか。
ガチガチに決めたわけじゃないけど、タイムアウトは目についた瞬間に即。
ほか2つは、だいたい3回くらい目障りに思ったらやろう、ということに。
それと、初配信でどんな内容をやるかの打ち合わせと練習なんかも。
自己紹介と、SNSでつぶやくときのハッシュタグを決めるってことにした。
ハッシュタグってのは、「#」って記号の後に言葉をつなげたタグ。
SNSのつぶやき本文にハッシュタグを入力すると、ハッシュタグをタップするだけで、そのハッシュタグが付いた投稿を検索する画面に移動できたりする。
つくりたいのは、私たちが配信始まりましたよーっていうツイートをするときにつかう配信タグ、ファンの人がファンアートをアップするときにつかうファンアートタグなど、いろいろ。
私が知ってるVチューバーさんのタグはみんな語呂とかのセンスがいいから、私もそういう声に出したいタグにできたらいいなぁ。
などなど。
ほんとに、本当にキツかった!
なのに――
「なんかもっとできることあったんじゃないか? って気がしてくるよー」
「晴香がそれ言うのもう3回目だけど」
「だ、だって……」
口を尖らせると、かなくんは私の手を取った。
「大丈夫だよ、できることは全部やってきた」
かなくんにそう言ってもらえると、ちょっと安心する。
にこっとかなくんに笑ってから、私は画面に目線を向けた。
同時接続者――つまりは今ちょうど待機してくれてる超ありがたい人の人数を見て、それからコメントをチラ見して、私はふぅと息を吐く。
「ううっ、緊張するな……かなくんは?」
「ハルほどはしてないと思う」
「いいなぁ……あ、予告した時間まであと1分だ」
パソコンを操作して、待機画面が配信に映るようにする。
……いよいよだっ!
「ね、かなくん、いよいよだよ」
「ああ。ようやくここまできた、って感じがするな。……でも、まだまだこれから、だろ?」
「うんっ!」
かなくんの言うとおりだ。
デビューはゴールではなく、スタートライン。
スタートラインの先に、どんなことが待ち受けているかは、まだ誰にもわからない。
だけど、かなくんとふたりでなら。
きっと私たちのVチューバー活動は、これからも楽しいことでいっぱいのはず。
だって――私の直感が、そう言っているから。
「時間だ! それじゃあ、行くよ!」
かなくんと目を合わせて、頷きあってから、私はマウスをクリックした。
配信に映るのが、待機画面から、Vモデルが映る画面に切り替わる。
――そして、私たちの初配信が始まった。
『女嫌いのスパダリと、2次元命な天才少女が、カップルVTuberをするようです。』完
縦型動画の投稿を欠かさないだけでも大変だったし、配信の初めに流す待機画面、終わった後のエンディング画面を用意するのがわりとキツくて……。
もちろん防音材の購入と設置もやったし。
そうそう、アンチが来たときどうするかってのも話した。
当然だけど会うなんてのはNG。無視するのが大前提だ。
問題は、どれくらいでブロック・ミュート・タイムアウトにするか。
ガチガチに決めたわけじゃないけど、タイムアウトは目についた瞬間に即。
ほか2つは、だいたい3回くらい目障りに思ったらやろう、ということに。
それと、初配信でどんな内容をやるかの打ち合わせと練習なんかも。
自己紹介と、SNSでつぶやくときのハッシュタグを決めるってことにした。
ハッシュタグってのは、「#」って記号の後に言葉をつなげたタグ。
SNSのつぶやき本文にハッシュタグを入力すると、ハッシュタグをタップするだけで、そのハッシュタグが付いた投稿を検索する画面に移動できたりする。
つくりたいのは、私たちが配信始まりましたよーっていうツイートをするときにつかう配信タグ、ファンの人がファンアートをアップするときにつかうファンアートタグなど、いろいろ。
私が知ってるVチューバーさんのタグはみんな語呂とかのセンスがいいから、私もそういう声に出したいタグにできたらいいなぁ。
などなど。
ほんとに、本当にキツかった!
なのに――
「なんかもっとできることあったんじゃないか? って気がしてくるよー」
「晴香がそれ言うのもう3回目だけど」
「だ、だって……」
口を尖らせると、かなくんは私の手を取った。
「大丈夫だよ、できることは全部やってきた」
かなくんにそう言ってもらえると、ちょっと安心する。
にこっとかなくんに笑ってから、私は画面に目線を向けた。
同時接続者――つまりは今ちょうど待機してくれてる超ありがたい人の人数を見て、それからコメントをチラ見して、私はふぅと息を吐く。
「ううっ、緊張するな……かなくんは?」
「ハルほどはしてないと思う」
「いいなぁ……あ、予告した時間まであと1分だ」
パソコンを操作して、待機画面が配信に映るようにする。
……いよいよだっ!
「ね、かなくん、いよいよだよ」
「ああ。ようやくここまできた、って感じがするな。……でも、まだまだこれから、だろ?」
「うんっ!」
かなくんの言うとおりだ。
デビューはゴールではなく、スタートライン。
スタートラインの先に、どんなことが待ち受けているかは、まだ誰にもわからない。
だけど、かなくんとふたりでなら。
きっと私たちのVチューバー活動は、これからも楽しいことでいっぱいのはず。
だって――私の直感が、そう言っているから。
「時間だ! それじゃあ、行くよ!」
かなくんと目を合わせて、頷きあってから、私はマウスをクリックした。
配信に映るのが、待機画面から、Vモデルが映る画面に切り替わる。
――そして、私たちの初配信が始まった。
『女嫌いのスパダリと、2次元命な天才少女が、カップルVTuberをするようです。』完



