「君に花を贈る」番外編……各所の花壇にて

 息子が結婚した。お相手は先代から付き合いのある家のお嬢さん。
 身内びいきかもしれないけれど、いいお式だったと思う。息子の藤乃もお相手の花音ちゃんも、仕事と私生活の合間によく準備していたと思う。

 藤乃は、親しい友人たちに一人ひとりブーケを用意していた。
 幼馴染の瑞希くんと葵ちゃんに、大学生のころからお世話になっている理人くん、それから私たち両親にも。

 藤乃が私の手伝いでブーケやアレンジを作り始めたのは小学一年生の頃で、それから二十年以上、途切れずに作り続けていた。
 大学を出てからは本格的に家業の造園屋と花屋の運営に携わるようになって、母親の目から見ても、頼もしくなったと思う。

「桐子さん、疲れちゃった?」

 息子の式からの帰り道。途中まではタクシーを使ったけど、なんとなく歩きたくなって駅前から家まで歩いている。
 式のときは着物だったけれど、レンタルだったので今は軽装だ。ひと月前に自宅の水道管が壊れて、家を建て直すことになったので、今は藤乃と花音ちゃん、私と夫で、それぞれ二人暮らしをしている。

「……ちょっと疲れたけれど、楽しかったわ」
「そっか。桐子さんが幸せなら、俺はそれでいいんだ」
「小春くん、プロポーズのときも、そう言ってたわね」

 冗談めかして言うと、夫は照れることもなく、にこやかに私を見た。

「もちろん。ずっとあなたを大事にするし、泣かせない。嫌な思いもさせない。あなたが隣にいてくれることが、俺の幸せだから」
「……今にして思えば、高校生なのによくそんな台詞が出てきたわね」

 聞いていた私のほうが、なんだか恥ずかしくなってしまう。まあ、あのときはそれどころじゃなかったけど。
 どん底にいた私の手を、彼が取ってくれただけで嬉しくて涙が止まらなかったのだ。
 あれから三十年以上、彼は変わらず私の手を引いて、暗い夜道を歩いている。
 でも今は、空には星が瞬いていて、私はもうひとりぼっちの子供じゃない。小春くんと、肩を並べて歩いている。

「ありがとう、小春くん」
「どういたしまして、先輩」

 私たちの道は、まだまだ続いている。