「君に花を贈る」番外編……各所の花壇にて

 俺、由紀瑞希の幼馴染の須藤藤乃は昔から感情が顔に出やすい男で、遊んでいるときも、飯を食っているときも、好きなものにはすぐに顔が明るくなるし、そうでなければしょんぼりする。
 なんか、デカい犬みたいだなと思っていた。
 親父同士も仲がよくて、物心ついたときには一緒にいたけど、学校が一緒だったのは高校だけだ。
 俺も藤乃も背が高くて顔も悪くなかったから、そこそこ……いや、正直かなりモテた。俺は高校生の間、遊び相手は途切れなかったけど、藤乃はそうじゃない。女の子に誘われても、面倒くさそうにして全部断っていて、友達すらほとんど作らず、仲のいい相手は、たぶん俺くらいだった。

「放課後、カラオケに行くんだけど、由紀くんも来ない? 須藤くんも誘ってさ」

 そんなふうに声をかけられたのも、一度や二度ではなかった。でも、それで俺が藤乃を誘ったことは一度もなかった。そんなことで、藤乃の友達を止めたくなかったから。

 そんな藤乃が、俺の妹に恋をした。
 藤乃に妹を探してくれと頼んだのは、俺だった。いつまで経っても帰ってこないから、どうせどこかで迷子になってるんだろうなって、思ったから。
 頼んだとおり、藤乃は妹を見つけてきてくれた。
 でも、戻ってきた妹は困ったような顔で、落ち着かずにそわそわしていたし、藤乃もわかりやすく顔を赤くして、俺に手を振るとすぐに行ってしまった。だから、ああ、そういうことかと思った。

「花音、礼は言ったか?」
「……言った。たぶん。ねえ、さっきの人って、瑞希の友達?」
「うん。そう」
「ふうん」

 それだけ言って、花音は抱えていたラナンキュラスを下ろす。
 なるほど、なるほど。
 わかりにくい妹の“しっぽ”も、そわそわと揺れているように見えた。

「高校は一緒だったけど、あいつは俺と違って面倒くさがりで、人付き合いも苦手。少なくとも、女の子と出かけたことは一度もない」
「……ふうん」
「男友達も、たぶん俺だけ。今は知らねえけど」

 花音は、何が言いたいのかとでも言いたげに、じっと俺を見る。

「面倒だし、気持ち悪いとこもあるけど、いいやつだよ」
「……それって、いい人なのかな」

 首をかしげる花音に、「さあ、どうだろうな」と笑って返す。
 妹に勧めてもいいかな、と思えるくらいには、いいやつだけど、それを素直に言えるほど、俺はいい奴じゃなかった。