「今日も桐子さんは、世界で一番きれいですね」
隣で荷物を運ぶ友人――須藤小春が、やつの嫁さんに声をかけている。
結婚して四十年以上になるのに、飽きもせず嫁さんを褒めるのは、どうやら須藤の血らしい。小春の息子・藤乃も、毎日花音に「かわいい」とか「きれい」とか言ってるらしい。
藤乃は新婚だからまだわかる。でも須藤は、もう四十年だぞ? 息子が結婚して孫までいるのに、まだ嫁にそんなこと言えるってのは……正直、俺にはわからない。
とはいえ、俺だってカミさんに、何も感じてないわけじゃない。
見合いをして、やっぱり三十年以上連れ立って来て苦楽を共にした彼女。
三十年も経てば、互いに見た目もそれなりに衰える。でも、ふとした時に、初めて会ったときの面影がふとよぎる。
今日は地域の子供会の催しで、夏祭りのときに子供に配る菓子の詰め合わせを作りにきた。
須藤の嫁とうちのカミさんは、並んで手際よく菓子を詰め合わせ、包み紙でくるっと巻いてテープを貼っている。
詰め合わせるのはうちのカミさん。包むのは須藤の嫁さん。途中からカミさんがテープ貼りを手伝ってたけど、やけに下手で、テープがぐにゃっとよれていた。
「……替わろうか」
「いいわよ。あなたは片付けしてらっしゃいな」
「そんなの、須藤に任せときゃいいんだよ。桐子さんに褒められたら、あいつは何だってやるよ」
「なに言ってるのよ」
吹き出すカミさんからテープを受け取る。
須藤の嫁さんから受け取った菓子に、順にテープを貼っていく。カミさんには箱詰めを任せた。
「由紀、なに座り込んでんだよ」
目ざとい須藤が、俺と嫁さんの間にさっと割り込んできた。
「うちのカミさんが不器用だから、代わっただけだっての」
「桐子さん、由紀から五メートル以上離れて」
「仕事にならないじゃない。もう、あなたたちでやりなさいよ」
嫁さんは、うちのカミさんと箱詰めした菓子を台車に乗せて、運び出していった。
結局、残りの菓子は俺と須藤で包むことになった。
帰り際、ふと思い立って、車のエンジンをかける前にカミさんに声をかけた。
「……俺にとって、一番かわいいのはお前なんだけどな」
カミさんはニコッと笑った。
「なにやらかしたの?」
「な、なんもしてねえってば!」
……どうにも、俺には須藤みたいな真似はできそうにない。
隣で荷物を運ぶ友人――須藤小春が、やつの嫁さんに声をかけている。
結婚して四十年以上になるのに、飽きもせず嫁さんを褒めるのは、どうやら須藤の血らしい。小春の息子・藤乃も、毎日花音に「かわいい」とか「きれい」とか言ってるらしい。
藤乃は新婚だからまだわかる。でも須藤は、もう四十年だぞ? 息子が結婚して孫までいるのに、まだ嫁にそんなこと言えるってのは……正直、俺にはわからない。
とはいえ、俺だってカミさんに、何も感じてないわけじゃない。
見合いをして、やっぱり三十年以上連れ立って来て苦楽を共にした彼女。
三十年も経てば、互いに見た目もそれなりに衰える。でも、ふとした時に、初めて会ったときの面影がふとよぎる。
今日は地域の子供会の催しで、夏祭りのときに子供に配る菓子の詰め合わせを作りにきた。
須藤の嫁とうちのカミさんは、並んで手際よく菓子を詰め合わせ、包み紙でくるっと巻いてテープを貼っている。
詰め合わせるのはうちのカミさん。包むのは須藤の嫁さん。途中からカミさんがテープ貼りを手伝ってたけど、やけに下手で、テープがぐにゃっとよれていた。
「……替わろうか」
「いいわよ。あなたは片付けしてらっしゃいな」
「そんなの、須藤に任せときゃいいんだよ。桐子さんに褒められたら、あいつは何だってやるよ」
「なに言ってるのよ」
吹き出すカミさんからテープを受け取る。
須藤の嫁さんから受け取った菓子に、順にテープを貼っていく。カミさんには箱詰めを任せた。
「由紀、なに座り込んでんだよ」
目ざとい須藤が、俺と嫁さんの間にさっと割り込んできた。
「うちのカミさんが不器用だから、代わっただけだっての」
「桐子さん、由紀から五メートル以上離れて」
「仕事にならないじゃない。もう、あなたたちでやりなさいよ」
嫁さんは、うちのカミさんと箱詰めした菓子を台車に乗せて、運び出していった。
結局、残りの菓子は俺と須藤で包むことになった。
帰り際、ふと思い立って、車のエンジンをかける前にカミさんに声をかけた。
「……俺にとって、一番かわいいのはお前なんだけどな」
カミさんはニコッと笑った。
「なにやらかしたの?」
「な、なんもしてねえってば!」
……どうにも、俺には須藤みたいな真似はできそうにない。



