柱
合宿所、ホール、翌朝
ト書き
松本史上、空前絶後の死に体
モブ「徹夜の宴会組に混じっていたらしいぜ」
ト書き
誌香、周りを見回す。昨日まで満席だったのに、今日はちらほら欠員がある。
ト書き
昼前、録音完了
松本「合奏は以上です。……お疲れ様っした……」
モノローグ:誌香
メインの三部を録音し終わると、松本は引っ込んでしまった。
ト書き
心配で退場する松本を見つめる誌香。……をじっと観察しているブンブン。
ト書き
二部の企画ステージは松本が振るのだが、副指揮者が叩きながらなんとか録音した。
一部は副指揮者担当だったから、危なげなく録り終えた。
ト書き
それから締めの一本締めをすると、撤収の準備に入った。
楽器や譜面台を片せば、ホールは元のガランとした空間になった。
ト書き
お昼のカレーを食べながら、合宿係の締めの挨拶で散会となった。
モノローグ:誌香
帰りは、実家に帰る奴らもいるから自由解散だ。荷物は宿に置かせて貰えるから、海に遊びに行く奴らもいる。
ト書き
一番大きな部屋に荷物と松本と誌香。ほかには誰もいない
モノローグ:誌香
私は何となく帰りそびれた。海にも行きそびれて、荷物とぐったりしている松本の見張りをしていた。
ト書き
顔にタオルで覆っている松本。体育座りをしている誌香
モノローグ:誌香
じっと見てても、松本はピクリとも動かない。
お腹を見ていたら、緩やかに起伏を繰り返しているから、生きてはいるようだ。
彼の周りには、メンバーの心遣いのタライにスポーツドリンク。時折ガサガサ言うのは、リバースに備えて頭の下にビニール袋を敷いてあるからだ。
ト書き
十五時くらい。
松本が
大儀そうに起き出した。
誌香「凄いなー、寝たままの姿勢から起きた」
ト書き
つい、感嘆する誌香
モノローグ:誌香
きっと腹筋が強いに違いない。
ト書き
松本はキョロキョロした後、誌香に眼を合わせて来た。
松本「誌歌」
ト書き
無表情ながら、ときめく誌香
モノローグ:誌香
まただ。松本に名前を呼ばれただけで、ときめいてしまう。好きな子以外、呼び捨てなんかしなければいいのに。
ト書き
目を見開く誌香
誌香「あ」
ト書き
固まったあと、青ざめる誌香
モノローグ:誌香
ブンブンの名前は、『ふみ』だ『"ふみ"か?』て聞いていたのだ。今も昨日の夜も。カーッとなった。
ト書き
赤面する誌香
モノローグ:誌香
恥ずかしい……! 私ってば、また勘違いしてたのだ。
ト書き
泣きそうになる誌香
宿の人「特急が来る時間だから、車で駅に送ってあげますよ」
ト書き
お言葉に甘える事に二人
二人「「……」」
ト書き
互いにそっぽを向いている二人
モノローグ:誌香
車の中で二人は無言だった。
あれほど距離があるように感じた駅は、車に乗るとすぐに到着してしまった。
ト書き
駅前
二人「ありがとうございました」
モノローグ:誌香
私達は、宿の方に礼を言って降りた。そして特急券と指定席を買ってホームに入場した。
ト書き
ジーワジーワとセミが鳴く中、ホームには二人だけ
日差しを遮るものもない中、私達は電車が来るのを黙って待っていた。
ト書き
ぷあん、と警笛を鳴らして特急がするするとホームに入って来た。
二人っきりで離れ離れに座るのもなんだから、並びの席を買っていた。
モノローグ:誌香
松本の隣!
それだけで、心臓は煩い程だった。緊張して畏まってしまう。
ト書き
なるべく座席の中で縮こまっていた誌香。松本は誌香の手を探し出すと、繋いできた。
ト書き
パニックしている誌香。松本はまたしても寝てしまった。
ト書き
松本をじっと見つめる誌香
モノローグ:誌香
……大きい手だなあ。
私も女子にしては大きな手だけど、松本の手は私よりも一回り大きかった。
ゴツゴツした指。
長いその指は、『彼女』にどんな風に触れるのだろう。荒々しく? ううん。なんとなく、優しい気がする。彼の手が、私の躰に触れる処を妄想してみた。
ト書き
松本、誌香の髪を撫でて、顎を仰向かせる
松本、誌香の頰に手を添える。
モノローグ:誌香
どんな感じなんだろう。
ト書き
誌香は自分の手ごと松本の手を持ち上げて、頰に当ててみた。
モノローグ:誌香
私の胸を弄って、アソコに手を忍び込ませて来て。
とろり、と。脚の間で感触があった。
誌香「松本……好き」
ト書き
誌香、小さくつぶやく
誌香「どうして、松本の好きな子が私じゃないんだろう」
モノローグ:誌香
私がこんなに松本を好きなのに、どうして神様は片思いなんて作ったの。みんな両思いにしてくれればいいのに。
ト書き
誌香の頬に涙が一筋流れる
誌香「そうすれば、誰も悩まないのに」
モノローグ:誌香
勝手だった。
私がそう願う権利があるように、松本を好きな他の子にもそう願う権利があった。勿論、ブンブンに片思いしている、松本にも。
合宿所、ホール、翌朝
ト書き
松本史上、空前絶後の死に体
モブ「徹夜の宴会組に混じっていたらしいぜ」
ト書き
誌香、周りを見回す。昨日まで満席だったのに、今日はちらほら欠員がある。
ト書き
昼前、録音完了
松本「合奏は以上です。……お疲れ様っした……」
モノローグ:誌香
メインの三部を録音し終わると、松本は引っ込んでしまった。
ト書き
心配で退場する松本を見つめる誌香。……をじっと観察しているブンブン。
ト書き
二部の企画ステージは松本が振るのだが、副指揮者が叩きながらなんとか録音した。
一部は副指揮者担当だったから、危なげなく録り終えた。
ト書き
それから締めの一本締めをすると、撤収の準備に入った。
楽器や譜面台を片せば、ホールは元のガランとした空間になった。
ト書き
お昼のカレーを食べながら、合宿係の締めの挨拶で散会となった。
モノローグ:誌香
帰りは、実家に帰る奴らもいるから自由解散だ。荷物は宿に置かせて貰えるから、海に遊びに行く奴らもいる。
ト書き
一番大きな部屋に荷物と松本と誌香。ほかには誰もいない
モノローグ:誌香
私は何となく帰りそびれた。海にも行きそびれて、荷物とぐったりしている松本の見張りをしていた。
ト書き
顔にタオルで覆っている松本。体育座りをしている誌香
モノローグ:誌香
じっと見てても、松本はピクリとも動かない。
お腹を見ていたら、緩やかに起伏を繰り返しているから、生きてはいるようだ。
彼の周りには、メンバーの心遣いのタライにスポーツドリンク。時折ガサガサ言うのは、リバースに備えて頭の下にビニール袋を敷いてあるからだ。
ト書き
十五時くらい。
松本が
大儀そうに起き出した。
誌香「凄いなー、寝たままの姿勢から起きた」
ト書き
つい、感嘆する誌香
モノローグ:誌香
きっと腹筋が強いに違いない。
ト書き
松本はキョロキョロした後、誌香に眼を合わせて来た。
松本「誌歌」
ト書き
無表情ながら、ときめく誌香
モノローグ:誌香
まただ。松本に名前を呼ばれただけで、ときめいてしまう。好きな子以外、呼び捨てなんかしなければいいのに。
ト書き
目を見開く誌香
誌香「あ」
ト書き
固まったあと、青ざめる誌香
モノローグ:誌香
ブンブンの名前は、『ふみ』だ『"ふみ"か?』て聞いていたのだ。今も昨日の夜も。カーッとなった。
ト書き
赤面する誌香
モノローグ:誌香
恥ずかしい……! 私ってば、また勘違いしてたのだ。
ト書き
泣きそうになる誌香
宿の人「特急が来る時間だから、車で駅に送ってあげますよ」
ト書き
お言葉に甘える事に二人
二人「「……」」
ト書き
互いにそっぽを向いている二人
モノローグ:誌香
車の中で二人は無言だった。
あれほど距離があるように感じた駅は、車に乗るとすぐに到着してしまった。
ト書き
駅前
二人「ありがとうございました」
モノローグ:誌香
私達は、宿の方に礼を言って降りた。そして特急券と指定席を買ってホームに入場した。
ト書き
ジーワジーワとセミが鳴く中、ホームには二人だけ
日差しを遮るものもない中、私達は電車が来るのを黙って待っていた。
ト書き
ぷあん、と警笛を鳴らして特急がするするとホームに入って来た。
二人っきりで離れ離れに座るのもなんだから、並びの席を買っていた。
モノローグ:誌香
松本の隣!
それだけで、心臓は煩い程だった。緊張して畏まってしまう。
ト書き
なるべく座席の中で縮こまっていた誌香。松本は誌香の手を探し出すと、繋いできた。
ト書き
パニックしている誌香。松本はまたしても寝てしまった。
ト書き
松本をじっと見つめる誌香
モノローグ:誌香
……大きい手だなあ。
私も女子にしては大きな手だけど、松本の手は私よりも一回り大きかった。
ゴツゴツした指。
長いその指は、『彼女』にどんな風に触れるのだろう。荒々しく? ううん。なんとなく、優しい気がする。彼の手が、私の躰に触れる処を妄想してみた。
ト書き
松本、誌香の髪を撫でて、顎を仰向かせる
松本、誌香の頰に手を添える。
モノローグ:誌香
どんな感じなんだろう。
ト書き
誌香は自分の手ごと松本の手を持ち上げて、頰に当ててみた。
モノローグ:誌香
私の胸を弄って、アソコに手を忍び込ませて来て。
とろり、と。脚の間で感触があった。
誌香「松本……好き」
ト書き
誌香、小さくつぶやく
誌香「どうして、松本の好きな子が私じゃないんだろう」
モノローグ:誌香
私がこんなに松本を好きなのに、どうして神様は片思いなんて作ったの。みんな両思いにしてくれればいいのに。
ト書き
誌香の頬に涙が一筋流れる
誌香「そうすれば、誰も悩まないのに」
モノローグ:誌香
勝手だった。
私がそう願う権利があるように、松本を好きな他の子にもそう願う権利があった。勿論、ブンブンに片思いしている、松本にも。



