明日は吹奏楽のお姉ちゃんの大事な大会が控えていた。
だからお姉ちゃんはいつもより早く布団に入った。
私も同じくらいの時間に二段ベットの上に登った。
そしてのんびりとベットの上でごろごろしていた。
そしたら急に咳が出てきた。
「ゴホッゴホッ…」
しかもそれは止まらない。
30分も、一時間も止まらない咳。
…おかしい。
別の部屋で妹も咳をしている。
寝たいのに寝れない。そんな暇さをかき消すように私はくだらない妄想をする他なかった。
私が咳をすると、妹も咳をする。
そんなふうに、私に対抗するように妹が咳をしているんじゃないかとどうでもいい妄想を繰り広げた。
…まあ、妹は寝ているんだと思うけど。
同室で寝ている姉が、この咳たちに耐えて寝ているわけがなかった。姉は、気配でも起きていることがわかった。
母が私の部屋にやってきて、扇風機をいじった。母は、私が咳をしまくっていることを知っているのだろう。
私は、この咳はアレルギーだと思っていた。私には、ほこり、ダニなどのアレルギーがあった。
アレルギー反応を抑える薬を、めんどくさがって飲んでいなかったからこんなに咳が出たんだろう。そのせいで、大会を明日に控える姉までも巻き込んでしまった。すごく悔やんだ。ちなみに、私もその日は眠かった。
だから、母には薬を飲んでいなかったことを怒られるだろう。だが、咳をしまくって喉が痛い私にとっては母はまるで天の助けだった。
母に咳が止まらないことを告げると、今すぐ下に行って薬を飲むようにと諭されて、私ははしごを使ってベットから降りて、一階へと向かった。
薬を飲んでも、あんまり変わった気はしなかった。
…当たり前か。流石に、そんなすぐには効かないよね。
「桃、今日はクッションを積み重ねて枕を高くして寝なさい。咳が少し出なくなるよ」
私、結構いいこと聞いた…‼︎
ベットに戻って、縫いぐるみを積み重ねてそれを枕にする。うう…縫いぐるみ、ごめんね…。
姉がまだ起きている気がして、何回も手を振ってみた。
手を振り返された。
やっぱ起きてたか。
「起きてたのね」
「起きてるよ」
「そうなんだ」
「そうだよ」
どうでもいい会話をして、姉に聞く。
「寝れないの?」
「寝れない」
「やっぱ咳のせい? ごめんよ」
「4割くらい咳のせい」
「残りの6割は何?」



