「なあ、ダメ?」
こてんと、首を横に傾ける晴人。
うわーっ! そんな子犬のような甘えた瞳で見られたら、たとえ嫌でも断れないじゃない……!
「分かった、いいよ」
私は笑顔で答えた。けれど、その笑顔の裏側で、漠然とした不安が広がっていた。
「やった! それじゃあ、次の日曜頼んだぞ」
「うん」
私は、晴人の横顔を見つめる。
晴人に頼りにされるのは、嬉しいけれど。もしかして私たち、この関係から一歩も進めないのかな……。
彼の無自覚な優しさが、私を一層不器用にさせていくのを感じていた。
彼はきっと、私を「なんでも話せる、頼れる親友」としてしか見ていない。
その心地よさに甘えて、私は本当の気持ちを隠し続けている。
このまま私は、彼の隣で偽りの笑顔を貼りつけ続けるしかないのだろうか。
でも、今のこの関係を壊すくらいなら、このままずっと、彼の「親友」でいるほうがまだマシだと思ってしまう。
そんな臆病な自分が、心底嫌になった──。



