それから私たちは、二人で教室の扉をくぐった。
晴人が繋いだままの手を、そっと強く握りなおす。
人に見つからないように、私はちょっとだけ彼の背中に隠れるようにして歩く。
「なんだ? 美波、もしかして恥ずかしいのか?」
晴人は楽しそうに笑いながら、私をからかってくる。
「っ……もう、晴人のバカ!」
晴人は立ち止まり、私の手を見つめた。
「ふはっ、ごめんごめん。でも、俺は嬉しいよ。こうして、お前と歩けて」
彼のその言葉が、私の心を温かく満たしていく。
「わ、私も……嬉しい」
心臓が熱くなるのを感じる。
こんなにも素直に、自分の気持ちを口にできるようになったんだと、少しだけ誇らしい気持ちになった。
ずっと縮まることのなかった、晴人との「あと1ミリ」の距離は、この秋、確かに消え去った。
これからは、親友という肩書きを外して、ずっと晴人の隣にいることができる。
「そうだ。ねえ、晴人。今度の週末、二人でどこか出かけない?」
晴人は優しいまなざしで私を見つめ、楽しそうに笑った。
「おっ、良いな。美波は、どこに行きたい?」
「んー、私はね……」
今、私の隣には晴人がいる。
彼の恋人として歩き始めたこの温かい道を、晴人と二人で、これからもずっと大切にしていこうと心に誓ったのだった。
END



