その言葉の続きは、言われなくても私には分かる。
だけど、やっぱり、晴人の口から言葉の続きをちゃんと聞きたかった。
「うん。親友じゃなくて、これからは?」
「これからは、恋人として……ずっと、俺の隣にいて欲しい」
「……うん。はい……っ」
声にならないほど嬉しくて、私はただ、頷くことしかできなかった。
「ありがとう、美波!」
ずっと縮まることのなかったあと1ミリの距離が、ようやくゼロになった瞬間だった。
夕日が差し込む、放課後の教室。誰もいないその場所で、私たちは恋人として初めて抱きしめあった。
彼のシャツから香る、懐かしい石鹸の匂い。
遠くから聞こえる、まだ片づけをしている生徒たちの声。
そして、私の肩越しに聞こえる、晴人の心臓の鼓動。
そのすべてが、この瞬間を特別なものにしていた。
私の背中に回された晴人の手は、ぎこちないけれど、すごく温かい。
二人の間に流れる空気が少しずつ、でも、確実に変わっていくのを感じた。



