「えっ。そんな顔って、どんな顔?」
「痛そうな顔。ほら、こんな感じ」
晴人が、酸っぱいレモンをかじったときのような顔をしてみせる。
「ふはっ!」
その顔が何だかおかしくて、私は思わず吹き出してしまった。
「何それ! 晴人ったら、変な顔! ていうか、私そんな顔してないし。あははっ」
「美波……やっと、笑ったな」
晴人が、ほっとしたように微笑む。
「最近の美波、なんとなく元気がなかったからさ」
あ……。
ここ最近は、晴人が谷原さんと仲良くしているのを見て、モヤモヤしていることが多かった。
そのせいで、知らないうちに、晴人に余計な心配をかけさせてしまっていたのかな。
「ごめんね」
私は晴人の腕の擦り傷の上に、絆創膏を貼りつけた。
指先が触れ合うたびに、彼の体温がじんわりと伝わってくる。
「あのさ、美波。俺、さっき……すごい焦ったんだ」
晴人は、意を決したように話し始める。



