親友のキミと、あと1ミリの恋



私は、慌てて彼から距離をとった。


「あっ、ありがとう。大丈夫だから……いやぁ、今日は暑いからかな……」


言い訳をしつつ、私は制服のスカートのポケットから、さっとハンカチを取り出す。


この顔を今、晴人に見られるのがとにかく恥ずかしかった。

彼にとってはきっと、友達として当たり前の優しさだろう。

だけど、私にとっては、その一つ一つが胸をざわめかせるような特別なことだから。


「ていうか、晴人も汗かいてるじゃない。ちゃんと拭かないと」


私は、たった今取り出した、まだ使っていないハンカチで、晴人の頬を流れる汗をそっと拭う。


「ありがとう、美波は優しいな。俺も、美波みたいに優しいところ、見習わないとな」


雲ひとつない青空にも負けない晴人の爽やかな笑顔に、胸の奥がじんわりと温かくなった。


それから、晴人と二人並んでヒグラシの声が降り注ぐ通学路を歩く。


私はいつも通り、彼との間に見えない線を引くように、少しだけ距離を取って歩いていた。


晴人の腕があと1ミリ……いや、ほんの数センチでいいから、私のほうに伸びてきてくれたら……。


指先が触れ合うだけでも、どれだけ幸せだろう。