美波が俺以外の他の男と楽しそうに話しているのを見ると、なぜか胸の奥がチクリと痛む。
もしかして、これが世間で言う「嫉妬」なのか? いや、そんなはずはない。だって美波は、幼なじみで親友なんだから……。
しかし、美波の少し寂しそうな横顔を見るたびに、俺の心はざわめくばかりだった。
「なあ、美波」
あれから美波のさびしそうな表情がつい気になって、俺は彼女に声をかけようとしたけれど。
「ねえ、石川くん。これってどうやるの?」
友梨に話しかけられ、俺はまた美波から背を向けてしまった。
胸に広がるモヤモヤ。それは、友梨と話す楽しさも、美波の寂しそうな表情も、すべてごちゃ混ぜにしたような、得体の知れない感情だった。
美波と友梨は、二人とも同じクラスの女子で、俺にとっては大切な友達だ。
なのに、美波に対してだけ湧き上がるこの胸のざわつきは、一体なんなのだろうか。
その感情の正体が、このときの俺にはまだ分からなかった。



