「石川くん!」
ちょうど同じタイミングで、友梨が俺に話しかけてきた。
そのとき、美波が俺たちから少し距離を取ったのが見えた。
気のせいか? いや、最近、そういうことが増えた気がする。
「あのね、石川くん」
友梨と話すのは楽しい。でも、美波が隣にいないと、やっぱりどこか落ち着かない。
俺は、いつからこんなに美波の存在を意識するようになったんだろう。
俺は友梨の話を聞きながら、美波のほうをこっそり見つめる。
親友だから、美波がそばにいるのは今までずっと当たり前だと思っていた。
だけど、この胸のざわつきは、当たり前なんかじゃない。
「真田さん、頑張ってるね」
クラスメイトの男子が、ニコニコと美波に声をかけるのが見えた。
なんだよ、あいつ……。
俺は、手のひらを握りしめる。爪が食い込むほどの力で、手のひらがじんわりと熱くなる。



