【晴人side】
最近、美波がどこかよそよそしい。
俺が友梨と話していると、すぐに別の場所に移動したり、話しかけても以前みたいに無邪気に返してくれなかったりする。
もしかして、何か怒らせたのか? でも、心当たりがない。
何かあったのか、と尋ねようとしても、美波はいつも「なんでもないよ」と笑うばかり。
その笑顔の奥に隠された感情を、俺は読み取ることができなかった。
まるで、俺に何か隠し事でもしているみたいだ……いや、美波に限ってそんなわけないか?
「ねえ、石川くん。昨日の歌番組見た? 石川くんの好きなアイドルが出てたでしょう?」
友梨との会話は楽しいし、頼られるのは嬉しい。
あいつは明るくて、話していると自然と笑顔になれる。だけど、なぜか美波がいないと、どこか物足りない。
文化祭の準備中、賑やかな教室の片隅で、美波が黙々と作業する姿を、俺はときどき目で追っていた。
……あ。美波、また前髪乱れてる。
あいつは、集中すると前髪が少し乱れる癖があるから。
「おーい、みなみ……」
俺が美波に、髪のことを伝えようと彼女に一歩近づいた……そのときだった。



