「いや、付き合ってないよ。美波は、ただの幼なじみだから」
曇りのない瞳で、はっきりと答える晴人。
「そして、仲の良い親友だな」
「……っ」
『ただの幼なじみ』『仲の良い親友』
晴人の口からその言葉を聞いた瞬間、私の心臓は、氷のナイフで突き刺されたように、鋭く痛んだ。
知っていたはずなのに。いざ口にされると、現実を突きつけられたようなショックで、息もできないほどの辛さが私を襲った。
鋏を持つ手が震え、涙が出そうになる。
ここは、教室だから。泣いちゃだめだ。私は、止まっていた手を必死に動かす。
晴人の言葉は、決して悪気はない。晴人はただ、事実を述べただけ。
そう、分かってはいるけれど……それが逆に、私の心を深く傷つけた。
晴人のことが好きなのは、私だけなんだ……。
私たちを繋ぐのは、固く結ばれた「親友」という名の鎖。
そのことを、改めて思い知らされた瞬間だった。



