親友のキミと、あと1ミリの恋



だけど、その声は晴人に届くことはなかった。だって、私よりも先に、谷原さんが晴人の肩をポンと叩いたから。


笑みを浮かべる谷原さんの手には、秋祭りのチラシがある。


「あれ? 晴人くん、また友梨ちゃんと一緒なんだ。最近あの二人、よく一緒にいるよね」


晴人たちに気づいた亜子が、ぽつりと呟く。


晴人は時折、白い歯を見せながら、谷原さんと楽しそうに話している。


そんな晴人の姿を見ていると、私の胸はチクチクと痛んだ。


谷原さん、秋祭りのチラシを持っているってことは、もしかして晴人を誘ったのかな?


私は、手にした教科書をきつく握りしめる。


そう思うと、なおさら晴人に声をかけることなんてできなかった。


その日以降、晴人から秋祭りの話題を出されることも、私が彼を誘うこともなく、ずるずると、ただ日にちだけが過ぎていった。


そして、ついに秋祭り当日を迎えた。


家の外から、賑やかなお囃子の音がかすかに聞こえてくる。


お祭りが始まったのだと実感すると、私の心臓は痛く脈打った。


外の音をシャットアウトするように、私は自室のベッドに潜り込む。


夜になり、空に花火が上がるたびに、窓の向こうが赤く染まった。その光が、まるで心臓を直接叩くように胸に響き、締めつけられるような苦しさが私を襲う。


一人だと、なんとなく行く気にはなれなくて、今年の秋祭りは参加を見送ってしまったけれど。


もし、私が晴人をお祭りに誘っていたら……。晴人は私と一緒に行ってくれてたのかな?